備蓄米のイメージ画像5kg2000円で放出された備蓄米に小売りやITの大手が飛びついた…その評価は「スピード経営」か「軽率な経営」か Photo:JIJI

米価格の高騰が続くなか、政府が放出した「激安備蓄米」に小売業界が殺到。5kgあたり2000円台前半という異例の安値に、説明会当日に“秒”で入札した企業たちがいました。老舗スーパーが二の足を踏む中、誰もが驚くような企業が大胆な動きを見せています。外食チェーンやIT大手まで参戦するその狙いとは? 驚きの入札劇の裏にある新たな流通戦略とは――。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)

備蓄米に飛びついた異端児たち
型破りな戦略が農水省を怒らせる?

 小泉農林水産大臣の奇策でコメ界隈が急におもしろくなってきました。

 5kgあたり約990円(1万1890円/60kg〈税込〉)で大手小売業者に直接売り渡す2022年産の備蓄米、つまり古古米20万トンに申し込みが殺到しました。この激安のコメは早ければ6月第一週にも、小売店頭に5kgあたり2000円台前半の価格で出回りそうです。

 5月26日午後4時に説明会を開催した後、当日の申し込みだけで14社(NHK 5月27日)、翌日には申し込みが70社に増えました。資格を精査した結果、最終的には61社の申し込みが確定したようです(農林水産省 5月28日)。2022年産は完売が見込まれることから、この段階で受付が一時停止となりました。

 政府は5月30日に、まだ売れ残っている2021年産の古古古米8万トン強について申し込み受付を再開する模様です。この状況、ひとことで言えば大手小売から見て備蓄米の直接放出は大人気だということです。

 ただいくら保管状況がいい玄米だといっても、古古米の販売に慎重な向きもあります。実際、イオン、イトーヨーカドーやCGCのようなスーパー業界の老舗企業の申し込みは説明会翌日の27日に集中しています。日本の大企業らしく慎重に検討して役員のハンコをもらうまで相応の時間がかかった様子です。

 一方で説明会が終ったあとの当日午後5時、普通なら残業時間であるにもかかわらず、

「そんなの関係ねぇ」

 と言って当日に大量の購入を申し込んだ会社があります。この当日入札組のリストを眺めると、これはなかなかにアントレプレナーシップにあふれた面々が揃っています。

 ということで今回は、備蓄米の契約に秒速で反応した小売業界のアントレプレナーたちの顔触れと戦略を考察してみることにしましょう。