ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
森信茂樹の目覚めよ!納税者

「消費税は転嫁しません」まで禁止する
価格表示規制は民の創意工夫を抑制する

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第48回】 2013年4月26日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 消費税率の8%への引き上げを1年後に控え、政府は、消費税の円滑で適正な転嫁を確保するため、大規模小売事業者などが、仕入れに当たって買いたたきなど、消費税の転嫁拒否の行為を行うことを法律で禁止する。

 加えて、価格表示についても、「消費税は転嫁しません」、「消費税は当店が負担しています」、「消費税率上昇分値引きします」、「消費税相当分,次回の購入に利用できるポイントを付与します」等の表示を禁止する。

価格表示の一律規制は当然か

 優越的地位にあるものが、納入業者に対して、買いたたきや転嫁拒否をする行為を禁じることは当然だろう。しかし、価格表示に関する規制については、一律禁止する前に、冷静に消費税と価格との関係を考えてみる必要がある。

 筆者は、本連載第8回 「『総額表示』と『外税方式』消費税引き上げにとってどちらが望ましい価格表示か」で、消費税と価格の関係について、以下のように論じた。

 「自由経済の下では、価格は需要と供給によってきまる。決して、コストによって決まるわけではない。たとえば、為替レートや国際市況の変化によって、日々原油価格や小麦等の1次産品価格などが変化しているが、それに応じて製品価格の値段をその都度変えているわけではない。小麦の値段とパンの価格との関係を見れば、消費者への価格転嫁が容易でないことが分かる。

 価格を形成するコストである人件費・原材料費や燃料などが日々価格変動していく中で、モノの価格が市場メカニズムで決まっていくと考えるなら、消費税率の引き上げだけが、特別なコストとして扱われる、つまりその分だけは絶対に引き上げなければならない、と考えることには、やや無理がある」。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

⇒バックナンバー一覧