ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

四川省雅安地震で
寄付先を一変させた中国国民の政治的成熟

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第153回】 2013年5月2日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

前回に続き、中国四川省雅安市芦山県で発生したマグニチュード(M)7.0の地震関連の話題を取り上げたい。中国で地震など大きな災害が発生すると、大規模な募金活動が繰り広げられる社会現象が見られる。これは、企業や個人を巻き込んだ全社会的慈善行為だと見ていいだろう。

 ただ、日本など海外の募金活動と違って、中国では、寄付金を出す企業や個人の名前などの情報が公開されるだけではなく、その寄付金の金額も公開される。そのため、企業同士や個人同士が寄付金の金額を争うかのように、寄付金の金額を吊り上げる現象も見られる。こうした現象が存在するので、寄付金の総額がすごい額となる。

寄付金の寄付先に異変

 2008年5月12日、四川省の◎川(ブンセン、ブンの字はさんずい篇に文、以下同)というところでM8.0の地震が起きた。死者・行方不明者が9万人近くにものぼったという甚大な被害が出ていたこともあり、ボランティア元年とも言われる北京五輪開催の年とも重なり、中国国民が◎川再建のために巨額の震災寄付金を寄付した。海外に居住する華僑・華人も競って寄付金を祖国に送った。こうした寄付金の送金先は、ほとんど中国赤十字会となっていた。

 しかし、雅安地震が発生したあと、中国で今までの常識では考えられない現象が起きた。一般の人々が出した震災救助のための寄付金の寄付先は中国赤十字会ではなく、真っ先に選んだのはなんとアクションスターのジェット・リー(李連傑)が運営するチャリティー基金会「壹基金(One Foundation)」だったのだ。

 地震発生当日、私が偶然にも広東省深*(シンセン、シンの字は土篇に川)市にいたが、深*でも他の都市と同じようにすぐに震災を救助するための募金活動が始まった。だが、市民たちが中国赤十字会の募金者を避けて通るか、その存在を無視するかの態度を取っていた。透明な容器で作られる中国赤十字会の募金箱には、お金がほとんど入っていない。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

「莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見」

⇒バックナンバー一覧