前回に続き、中国四川省雅安市芦山県で発生したマグニチュード(M)7.0の地震関連の話題を取り上げたい。中国で地震など大きな災害が発生すると、大規模な募金活動が繰り広げられる社会現象が見られる。これは、企業や個人を巻き込んだ全社会的慈善行為だと見ていいだろう。

 ただ、日本など海外の募金活動と違って、中国では、寄付金を出す企業や個人の名前などの情報が公開されるだけではなく、その寄付金の金額も公開される。そのため、企業同士や個人同士が寄付金の金額を争うかのように、寄付金の金額を吊り上げる現象も見られる。こうした現象が存在するので、寄付金の総額がすごい額となる。

寄付金の寄付先に異変

 2008年5月12日、四川省の◎川(ブンセン、ブンの字はさんずいに文)というところでM8.0の地震が起きた。死者・行方不明者が9万人近くにものぼったという甚大な被害が出ていたこともあり、ボランティア元年とも言われる北京五輪開催の年とも重なり、中国国民が◎川再建のために巨額の震災寄付金を寄付した。海外に居住する華僑・華人も競って寄付金を祖国に送った。こうした寄付金の送金先は、ほとんど中国赤十字会となっていた。

 しかし、雅安地震が発生したあと、中国で今までの常識では考えられない現象が起きた。一般の人々が出した震災救助のための寄付金の寄付先は中国赤十字会ではなく、真っ先に選んだのはなんとアクションスターのジェット・リー(李連傑)が運営するチャリティー基金会「壹基金(One Foundation)」だったのだ。

 地震発生当日、私が偶然にも広東省深*(シンセン、センの字は土篇に川)市にいたが、深*でも他の都市と同じようにすぐに震災を救助するための募金活動が始まった。だが、市民たちは中国赤十字会の募金者を避けて通るか、その存在を無視するかのような態度を取っていた。透明な容器で作られる中国赤十字会の募金箱には、お金がほとんど入っていない。