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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

ついにタブー「天安門事件」の論考までも黙認
西側言説“輸入”で習近平が得たかった正当性

加藤嘉一
【第3回】 2013年5月7日
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共産中国の台頭を受け入れ
建設的な関係を築こうとする米国知識界

前回コラムでは、米国を代表する政治学者、フランシス・フクヤマ氏が冷戦崩壊期の1989~1992年に発表し、学術界・言論界を震撼させた「歴史終焉論」を、中国改革開放総設計師・鄧小平氏の「社会主義を堅持しつつ改革開放を推進する」という国家戦略と比較しながら検証した。

 当時、フクヤマ氏は「冷戦の崩壊は西側自由民主主義の東側共産社会主義に対する完全勝利を意味している。自由民主主義こそが最高の政治体制であり、社会の最終形態である」と主張し、ソ連の解体に続き、「共産中国の崩壊」を以て同氏の論考は歴史的に証明されるはずであった。

 しかし「共産中国」は現在に至るまで崩壊していない。それどころか、人類社会の進化に欠かせないアクターとして、国際社会はその存在と台頭を受け入れつつある。

 「中国の台頭を受け入れつつ、政治体制や価値観の違いを乗り越えて、如何にして中国と建設的なウィン-ウィン関係を築いていくか」という現実的論調が、米国知識界の主流であると前回コラムで述べた。

 フクヤマ氏も同じスタンスに立っている、と私は考える。それを如実に証明するのが、同氏が2011年に『The Origin of Political Order−From Prehuman Times to the French Revolution』(Farrar, Straus and Giroux)を出版し、「中国の政治体制をめぐって古来脈々と流れるエッセンスは何なのか」という命題を、西側における自由民主主義との比較を通じて検証したリアリティーに見いだせる。

 仮に「歴史終焉論」で展開されるように、フクヤマ氏が「共産中国の崩壊」を前提に冷戦後の世界を観察してきたとしたら、同書のタイトルにある如く、「政治秩序の起源」を模索するような学術努力は払わないであろう。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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