平野 みんな、どうすれば、好きな分人を長く生きられるか、ということを、これからはシビアに考えていくと思います。自分が死ぬ時に、自分が個々の分人をどれくらいの長さ生きたかを振り返る。その時に、あの分人をもっと生きたかった、あっちの分人を生きることにそんなに時間を費やすべきじゃなかったと、そういう見え方になるんじゃないか。ブラック企業で働いていた時の分人とか、あるいは極端な例では、戦場に行かされた分人だとか。

『空白を満たしなさい』という僕の小説のテーマも、そこのところは大きいんです。リアルタイムでも、嫌な分人を生きるのが辛い、嫌だ、消してしまいたい、という感情はどうしても湧いてくる。その時、どう考えるべきなのか。今、若い自殺者がすごく多いですが、僕はこの問題を考えるべきだと思ってます。

 ここ10年ぐらい、きれいごとではなく、本当にお金じゃない経済圏というか、そういう社会の動きがかなり増えてきたな、と改めて実感していますが、そういうあたりに関係してるんじゃないですかね。

山口 本日は貴重なご意見をうかがうことができて、本当に勉強になりました。ありがとうございました。

平野 こちらこそ、ありがとうございました。(談)

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