ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか――目的工学[入門編]
【第10回】 2013年5月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
野中郁次郎 [一橋大学名誉教授],紺野登 [多摩大学大学院教授、KIRO(知識イノベーション研究所)代表]

最先端の経営学は、理論と実践をどう捉えるのか?
目的と手段が、JALの再生に果たした役割を考える。
――対談:野中郁次郎×紺野登(後編)

1
nextpage

知識創造経営のコンセプトの生みの親である世界的経営学者の野中郁次郎氏と、野中氏の研究パートナーで『利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのかーードラッカー、松下幸之助、稲盛和夫からサンデル、ユヌスまでが説く成功法則』の著者、目的工学研究所所長の紺野登氏との対談後編をお送りする。
野中氏は「経営者の主観を排除したサイエンスに基づく経営は成り立たない」と説き、紺野氏は「目的と手段の間に相互に起こるフィードバックの中でイノベーションが生まれる」と主張する。対談の後編では、目的に近づいていくための実践的リーダーシップについて語る。(構成/曲沼美恵)

リーダーシップを追求すると
経営はサイエンスではないことがわかる

野中郁次郎(のなか・いくじろう) 
一橋大学名誉教授
早稲田大学政治経済学部卒業。富士電機製造(株)勤務ののち、カリフォルニア大学経営大学院(バークレー校)にて博士号(Ph.D)を取得。南山大学経営学部教授、防衛大学校教授、一橋大学産業経済研究所教授、北陸先端科学技術大学院大学教授、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授を経て現職。カリフォルニア大学経営大学院(バークレー校)ゼロックス知識学名誉ファカルティースカラー、クレアモント大学大学院ドラッカー・スクール名誉スカラー、早稲田大学特命教授を併任。知識創造理論を世界に広め、ナレッジ・マネジメントの権威として、海外での講演も多数。論文、著書多数。

野中 紺野さんとの出会いは1990年頃、その後その成果をもとに1995年、日本経済新聞社から『知力経営』という本を出しました。あれはたしか、その翌年、フィナンシャルタイムズから賞もいただきましたね。

紺野 あの頃、私はまだ博報堂におりまして、デザインマネジメントを研究していました。当時から広告代理店というものは単にメディアを売るビジネスではなく、企業に対する知のアウトソーシングも含めてできるような組織になるべきだという議論があり、そのための方法論を模索していた時に野中先生の理論に触れ、門を叩かせていただいた。当時はまだ「知識創造」という言葉を使われていなくて、「情報創造」という言葉を使われていたかと思います。

野中 そうでした。それで、一緒に「デザインとは何ぞや」ということを調べていって、情報創造から知識創造へ、さらには、それを実践するには体系だった「場」も必要だろう、ということが見えてきた。場の論文に関しては、紺野さんと一緒に英語で書いたカリフォルニア・マネジメントレビューに載ったものが最初でした。

紺野 そう、あれは1998年です。そこから、だんだんと場を運営していくためのリーダーシップも必要であるという話になり、2007年に共著で出させていただいた『美徳の経営』(NTT出版)へとつながっていきます。

野中 リーダーシップという問題を深く追求していくと、結局、「何がグッド」かという価値判断にかかわるテーマを扱わざるをえなくなる。実際のマネジメントというのは、そうした主観に基づく価値判断を個別具体例から紡いでいって普遍的にしていくところにおもしろさがある訳ですから、主観を完全に排除したサイエンスとしての経営学というのは、本来、あり得ない話です。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
キーワード  戦略
まいにち小鍋

まいにち小鍋

小田真規子 著

定価(税込):本体1,100円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
簡単で安くて、ヘルシー。ポッカポカの湯気で、すぐにホッコリ幸せ。おひとりさまから共働きのご夫婦までとっても便利な、毎日食べても全然飽きない1〜2人前の小鍋レシピ集!「定番鍋」にひと手間かけた「激うま鍋」。元気回復やダイエットに効く「薬膳鍋」や、晩酌を楽しみたい方に嬉しい「おつまみ鍋」など盛り沢山!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


野中郁次郎 [一橋大学名誉教授]

1935年東京生まれ。早稲田大学特命教授。58年早稲田大学政治経済学部卒業後、富士電機勤務を経て、カルフォルニア大学バークレー校経営大学院博士課程修了(Ph.D)。南山大学、防衛大学校、一橋大学、北陸先端科学技術大学院大学、一橋大学大学院国際企業戦略研究科で教鞭を執る。紫綬褒章、瑞宝中綬章受章。知識創造理論の提唱者であり、ナレッジ・マネジメントの世界的権威として、米経済紙による「最も影響力のあるビジネス思想家トップ20」でアジアから唯一選出された。さらに2013年11月には最も影響力のある経営思想家50人を選ぶThinkers50のLifetime Achievement Award(生涯業績賞、功労賞)を受賞。近年は企業経営にとどまらず、地域コミュニティから国家までさまざまな組織レベルでのリーダーシップや経営のあり方にも研究の場を広げている。主な著作に、『失敗の本質』(ダイヤモンド社)、『アメリカ海兵隊』(中央公論新社)、『知識創造企業』(東洋経済新報社)など。

Facebook「史上最大の決断」

紺野登 [多摩大学大学院教授、KIRO(知識イノベーション研究所)代表]

多摩大学大学院教授、ならびにKIRO(知識イノベーション研究所)代表。京都工芸繊維大学新世代オフィス研究センター(NEO)特任教授、東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェロー。その他大手設計事務所のアドバイザーなどをつとめる。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博士(経営情報学)。
組織や社会の知識生態学(ナレッジエコロジー)をテーマに、リーダーシップ教育、組織変革、研究所などのワークプレイス・デザイン、都市開発プロジェクトなどの実務にかかわる。
著書に『ビジネスのためのデザイン思考』(東洋経済新報社)、『知識デザイン企業』(日本経済新聞出版社)など、また野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)との共著に『知力経営』(日本経済新聞社、フィナンシャルタイムズ+ブーズアレンハミルトン グローバルビジネスブック、ベストビジネスブック大賞)、『知識創造の方法論』『知識創造経営のプリンシプル』(東洋経済新報社)、『知識経営のすすめ』(ちくま新書)、『美徳の経営』(NTT出版)がある。


利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか――目的工学[入門編]

「手段の時代」から「目的の時代」へ――手段にとらわれすぎると、本質を見失う。リーマン・ショックの経験を経て、世界じゅうの先覚者たちが、目的の重要性を唱え始めた。まず「利益」ではなく、「よい目的」を考えるビジネスを実践するために、私たちにできることは何か。はじまった目的工学の取り組みをさまざまな形で紹介していく。

「利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか――目的工学[入門編]」

⇒バックナンバー一覧