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安東泰志の真・金融立国論

「異次元緩和」時代の銀行の運用戦略とは

安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]
【第33回】 2013年5月17日
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 黒田日銀が「異次元緩和」とも言われる量的緩和を発表してから2ヵ月半が経過した。公式には認めていないものの、政府日銀の当初の狙い通りに円安が進み、それにつれて株式も大幅高となっている。そして、当初大混乱していた国債市場もやや落ち着きを取り戻しつつある。

 しかし、この「異次元緩和」は、銀行のALM(資産負債総合管理)の「Asset」、つまり資産運用戦略に大きな影響を与えることになる。なぜならば、後述するように、銀行の預貸率(預金に占める貸出の割合)は大幅に低下しており、常に「Liability」、つまり負債(預金)超過の状態にあり、その運用こそが経営課題だからだ。

量的緩和の狙いは銀行のリスクテーク

 今般の日銀の「異次元緩和」の大きな狙いの一つは、銀行がよりリスクを取って融資を増加させるなど、銀行の資産運用戦略を積極化させることであった。銀行は、これまで余資の大半を国債購入に振り向けてきた。

 しかし、長期国債の利回りが一旦大幅低下し、預金保険料や人件費等の経費を織り込んだ実効資金調達コストを割り込んでしまう「逆ザヤ」の状況になったかと思えば、その後、一時は0.3%台まで低下した10年物国債利回りが0.8%(5月13日現在)程度まで反発するなど、今度は予期せぬ金利上昇(国債価格下落)リスクも高まっており、いずれも銀行にとっては国債保有をためらわせる要因になっている。

 無論、20年国債を買えば、まだ利回りは1.6%程度あり、当面の利ザヤは安定的に取れるが、これから2%ものインフレを実現させようという政策が継続することを考えれば、おいそれと将来の価格下落(金利上昇)リスクは取れない。購入する国債の期間が長いほど、将来金利が上昇に転じた場合の価格下落リスクが一層大きくなるからだ。

 したがって、今回の日銀の量的緩和は、こういう国債価格の乱高下を予期していたかどうかは別にして、結果的には、銀行に国債保有を縮小させ、他の資産、特に融資増大という形での運用を促すという所期の目的を達していることになる。

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安東泰志 [ニューホライズン キャピタル 取締役会長兼社長]

東京大学経済学部卒業、シカゴ大学経営大学院(MBA)修了。1981年に三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行、1988年より、東京三菱銀行ロンドン支店にて、非日系企業ファイナンス担当ヘッド。90年代に英国ならびに欧州大陸の多数の私的整理・企業再生案件について、参加各行を代表するコーディネーターとして手がけ、英国中央銀行による「ロンドンアプローチ・ワーキンググループ」に邦銀唯一のメンバーとして招聘される。帰国後、企画部・投資銀行企画部等を経て、2002年フェニックス・キャピタル(現・ニューホライズンキャピタル)を創業し、代表取締役CEOに就任。創業以来、主として国内機関投資家の出資による8本の企業再生ファンド(総額約2500億円)を組成、市田・近商ストア・東急建設・世紀東急工業・三菱自動車工業・ゴールドパック・ティアック・ソキア・日立ハウステック・まぐまぐなど、約90社の再生と成長を手掛ける。事業再生実務家協会理事。著書に『V字回復を実現するハゲタカファンドの事業再生』(幻冬舎メディアコンサルティング 2014年)。
 


安東泰志の真・金融立国論

相次ぐ破綻企業への公的資金の投入、金融緩和や為替介入を巡る日銀・財務省の迷走、そして中身の薄い新金融立国論・・・。銀行や年金などに滞留するお金が“リスクマネー”として企業に行き渡らないという日本の問題の根幹から目をそむけた、現状維持路線はもはや破綻をきたしている。日本の成長のために必要な“真”の金融立国論を、第一線で活躍する投資ファンドの代表者が具体的な事例をもとに語る。

「安東泰志の真・金融立国論」

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