ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
インキュベーションの虚と実

エンタープライズ市場の時代がやってきた!
クラウドやUXの進化で新たに生まれるニーズとチャンス

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第27回】 2013年5月27日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
5
nextpage

クリエイティブにB2Bを捉え
B2Cのワナから脱却せよ

 スタートアップのテーマは、創造的に考えたいものだ。だから従来のエンタープライズの枠に囚われず、もっと広い視点をもってビジネスの創造に取り組みたい。

 そのときに、コンシューマー向けの枠に囚われてはいけない。筆者が改めて伝えたいのは「B2Cのワナからの脱却」だ。

 脱却を上手く行なった事例をいくつか挙げよう。第25回で紹介した日本人エンジニアが米国で起業したSearchmanは、B2Bにピボットした。コンシューマー向けからB2Bへの転換もありだ。

 また、あるコンシューマー向けのEコマースのスタートアップは、販売チャネルとして法人営業を検討している。これもありだろう。事実、通販大手の千趣会は職域販売から事業を伸ばした。ネットではないが、オフィス・グリコも大ヒットしている。コンシューマー向けの枠に限る必要はない。

 コンシューマー向けに皆が虜になっていたがゆえに、空白地帯が出現してはいないか。その空白地帯を上手く捉え、ビジネスを発展させた事例を紹介しよう。

 法人・団体向け弁当受注サイトのスターフェスティバルは、昔ながらの弁当屋という事業を転換した。弁当屋は基本的には一般個人に売ることが主だ。しかし、法人にフォーカスすると、全く違う事業になる。

 例えば、ある企業で急に大量の弁当が必要になったらどうするか。そういった法人の問題を解決した。製造販売の弁当屋ではキャパシティが限られるため、急で大量の注文には1社では応えられない。しかし、多くの弁当屋を束ねれば、なんとかなる。同じ弁当屋でも、一般個人の問題と法人の問題は異なる。法人が困ったときに頼りになれば、リピート顧客になってくれる。つまり、似て非なる事業が構築できるのだ。

 また、DropBoxのエンタープライズ版とも言えるBoxは、DropBoxの同様のファイル共有サービスを提供しているが、一般向けのDropBoxを受け入れ難い企業にサービスを提供し、売上を伸ばしている。営業部隊や顧客サービスの体制を持ち、Fortune 500企業の9割以上をBoxのユーザーにしている。2億8700万ドルの資金調達に成功しているが、2012年7月に筆者の古巣のGeneral Atlanticから、元GEのCIOであるGary Reinerを社外取締役に迎え、さらに1億ドルを得ている。コンシューマーや一般向けとは異なる戦い方でエンタープライズ市場を取る構えだ。

 このように、エンタープライズ市場の範囲は拡大している。クリエイティブに、発想を転換したいものだ。もちろん、この市場で戦うには経営チームに求められるスキルや経験がコンシューマ市場だけを攻めていた場合とは異なる。だからDropBoxもBoxの台頭を止められない。ハードルは上がるが、これをチャンスと捉えることができるだろう。

previous page
5
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

本荘修二

新事業を中心に、日米の大企業・ベンチャー・投資家等のアドバイザーを務める。多摩大学(MBA)客員教授。Net Service Ventures、500 Startups、Founder Institute、始動Next Innovator、福岡県他の起業家メンター。BCG東京、米CSC、CSK/セガ・グループ大川会長付、投資育成会社General Atlantic日本代表などを経て、現在に至る。「エコシステム・マーケティング」など著書多数。訳書に『ザッポス伝説』(ダイヤモンド社))、連載に「インキュベーションの虚と実」「垣根を超える力」などがある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

「インキュベーションの虚と実」

⇒バックナンバー一覧