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今年5月中旬、世界の穀物関係者は気をもんでいた。米国の穀倉地帯が低温と長雨に見舞われ、作付けに大幅な遅れが生じていたのだ。12日時点で、作付け進捗率は平年のトウモロコシ65%、大豆24%に対し、それぞれ28%、6%という記録的な低さとなっていた。
米農務省の報告では、トウモロコシも大豆も今年は豊作が予測されているが、これは5月の天候不順を織り込んでいなかった。
その後の天候の回復で作付けは驚異的な挽回を見せ、「懸念される状況ではなくなった」(平山順・日本先物情報ネットワーク主任研究員)が、実際はこの遅れがどこまで後を引くか予断を許さない。
実は豊作のためには「トウモロコシで5月15日ごろが作付けの限度」(津賀田真紀子・マーケット・リスク・アドバイザリー アナリスト)とされるのだ。
そもそも、日本への最大輸出元である米国の穀物在庫は、昨年夏の大干ばつの影響でいまだ低水準。南米産の大豆は豊作だったものの、インフラ不足で輸出は伸び悩んでいる。ちょっとしたことでも、相場が乱高下しやすい状況にある。
日本ではすでに食用油やマヨネーズ、ハムなどで、値上げが相次いでいる。要因の一つには、原材料、飼料であるトウモロコシと大豆の価格高止まりがある。
これに加えて急激な円安の進行が、先行きに影を落とす。当面は、穀物相場の動向を、注視する必要があるだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)