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岸博幸のクリエイティブ国富論

出版デジタル機構の電子書籍取次買収は最悪の愚策
繰り返される「JAL再生での失敗」

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第230回】 2013年5月31日
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 政府の肝いりで設立された出版デジタル機構が、電子出版の取次大手ビットウェイを買収しました。それを大きく報道した5月30日の日経の記事を読むと、電子出版の普及に向けた前向きな動きのように見えますが、事実は正反対ではないでしょうか。

電子出版のビジネスの実態

 結論から先に言えば、今回の出版デジタル機構によるビットウェイの買収は、多額の公的資金など政府の過剰支援によるJAL再生が航空産業の競争条件を歪め、それによって民間企業として自力で頑張っているANAが競争上不利な立場に置かれている状態と同じ悪影響を生じさせます。

 即ち、公的資金による民業の圧迫という、JALと同じ失敗が繰り返されようとしているのです。その背景にあるのは、政府の所管官庁、官民ファンドの産業革新機構、そして公的資金の出資を受けている出版デジタル機構という三者による、公的支援という制約条件を無視したモラルハザードに他なりません。

 その部分をご理解いただくためにも、まず電子出版のビジネスの流れを復習すると、図のようになります。

 まず、出版社から電子書店に電子書籍が渡るルートとしては、直取引と取次経由という2種類が存在します。ちなみに、直取引と取次経由の割合は7:3くらいになると思います。

 次に、電子書籍の取次は、既にビットウェイをはじめ多くの民間企業が参入してビジネスを展開しています。つまり、出版社や電子書店と同様に、電子書籍の取次は純粋に民業の世界となっているのです。ちなみに、その中でビットウェイのシェアがだいたい5割くらいで、残りのシェアを多くの企業で分け合っている感じです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。

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