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岸博幸のクリエイティブ国富論

コンテンツ産業が農業と同じ轍を踏む恐れも
“クールジャパン戦略”への危機感

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第229回】 2013年5月24日
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 政府は成長戦略の取りまとめに入り、今週開催された産業競争力会議では、関連する会議などでの検討状況が報告されました。その中で「クールジャパン戦略」についても報告されていますが、その内容はあまりにひど過ぎると言わざるを得ません。

本質的な強化策を欠いた日本政府の戦略

 そう感じた背景には、特に最近、フランスが非常に正しい方向のコンテンツ政策を打ち出したことにあります。

 まず日本のクールジャパン戦略については、産業競争力会議に提出された資料『クールジャパン推進会議における検討状況について』をご覧いただければ分かるように、政府が考えている政策は基本的に海外でイベントをやること以外は、公的資金500億円を投じた官民ファンドでコンテンツ関連の日本企業の海外展開を支援することくらいです。

 果たしてこの程度の政策で日本のコンテンツ産業は強化されるでしょうか。コンテンツ産業が直面している最大の問題は、ネットがメインの流通経路となる中で、良いコンテンツを作ってもそれに見合った収入を得られなくなってしまったという点にあります。もちろん、ネット対応で必要なのはビジネスモデルの進化という自助努力ですが、政府はそれを支援すべきなのに、この点については何の政策も提示されていません。

 政府としては著作権法を改正して違法ダウンロードの罰則化を行なったのだから、あとはコンテンツ企業が自力で頑張れということなのかもしれません。ただ そうした本質的な産業の強化策を抜きにして海外に売り込もうとするのは、本末転倒ではないでしょうか。

スマホに課税で補助金を捻出するフランス

 それと比較すると、改めてフランスのコンテンツ政策は的を射ていると感じざるを得ません。フランスでは元々“L’exception Culturelle”(英語で書くと“cultural exception”)という考えが政策でも浸透しています。コンテンツなどのクリエイティブな作品は、通常の財やサービス以上に保護する必要があるという考え方です。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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