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検証!「アベノミクス」

これから求められる金融・財政政策運営
50兆円規模の財政再建の具体像を示せるか
――日本総合研究所主任研究員 河村小百合

河村小百合 [日本総合研究所調査部上席主任研究員]
【第8回】 2013年6月5日
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財政運営の持続可能性について、いったん、市場の信認を失った国が、どれほど苦しい財政運営を迫られることになるのか、市場金利上昇に歯止めをかけるには、短期間でいかなる財政運営をしてみせることを迫られるのかは、連載第4回「日本の財政は持続可能か 3%成長でも20年度で財政赤字は50兆円」、および連載第6回「市場金利が上昇したら何が起こる?欧州危機の経験が語るもの」で詳しくみた。筆者担当の最終回となる今回は、わが国に求められる金融・財政政策運営はどのようなものかを考えたい。

「異次元緩和」導入2ヵ月の状況

 黒田日銀がいわゆる「異次元緩和」をスタートさせてから2ヵ月が経過した。株式市場は活況に沸き、安倍首相のリーダーシップもあって、国全体として、経済の先行きに関する期待が好転する兆しがみられる。「デフレ均衡」は破られつつあるといってよいだろう。そうしたなか、資産価格の上昇傾向が目立つ。

 他方、物価動向に目を転じれば、円安が輸入物価を押し上げる影響が出始めているものの、一般物価全体として、明確な上昇基調が強まるのか、それが、実体経済に好影響を及ぼすのかどうか、判断はまだ難しい状況にある。株式市況は5月下旬以降、いったん、調整局面に入ったようにも見受けられる。

 気になるのは国債市場の動向だ。4月に導入された「量的・質的金融緩和」は、少なくとも当初は「イールドカーブ全体の金利低下を促す」(日本銀行『「量的・質的金融緩和」の導入について』2013年4月4日)ことを企図していたはずであるが、国債市場で形成される長期金利(国債の価格と裏腹の関係)はその導入以降、国債の値動きが荒くなるなかで、徐々にその水準を切り上げつつある(国債の価格は切り下がりつつある)のが実態だ。これには、①インフレ期待が徐々に高まりつつあることが、金利形成に織り込まれつつあるという側面と、②「異次元緩和」によるオペの規模が大き過ぎ、市場流動性が乏しくなっており、値が飛びやすいという側面の2つがあるように見受けられる。

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河村 小百合 [日本総合研究所調査部上席主任研究員]

かわむら・さゆり/日本総合研究所調査部上席主任研究員。1988年京都大学法学部卒。日本銀行勤務を経て、現職。専門は金融、財政、公共政策。これまでの執筆論文・レポート等は参照。公職:財務省国税審議会委員、厚生労働省社会保障審議会委員、内閣官房行革推進会議歳出改革WG構成員、同独立行政法人改革等に関する分科会構成員、住宅金融支援機構事業運営審議委員会委員ほか。

 


検証!「アベノミクス」

安倍政権の経済政策である「アベノミクス」は上々の滑り出しを見せている。だが、それは「期待」を転換させた段階に過ぎず、政策体系としては発展途上であり、まだまだ未完成だ。そこで本連載では、日本総研を代表する3人のエコノミストである山田久、西沢和彦、河村小百合がそれぞれ成長戦略、社会保障、財政再建について、「建設的批判」の観点からアベノミクスを検証し、あるべき方向について提言を行っていく。 

「検証!「アベノミクス」」

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