ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

不安定化した金融市場
円安・株高バブルは、投機でもたらされた

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第8回】 2013年6月13日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

 株価や為替レートの乱高下が続いている。日本の金融市場は著しく不安定化した。

 株式市場における株価変動の度合いは、「ボラティリティ」という指標で表される。東京証券取引所が計算する株価のボラティリティは、図表1に示すとおりだ。

 単にボラティリティが増しただけでなく、株価や為替レートの動向も一転したように見える。2012年秋以来ほぼ一貫して円安になっていた為替が円高になり、上昇してきた株価が、13年5月になって変調した。

 こうした状況は、なぜ生じたのだろうか?

 以下では、その理由は、昨年秋以来の為替レートと株価が投機によって動かされたことにあると論じる。

 具体的には、つぎのとおりだ。

(1)12年11月頃に、13年5月頃までの期間の円安投機が行なわれたと考えると、為替レートの状況を説明することができる。それによって、株価が変動した。
(2)投機を行なう手段としては、直物取引と先物取引がある(注1)が、これらは(取引コストの差を無視すれば)本質的に同一のものである。したがって、投機か否かの差は、直物取引か先物取引かの差ではない。
(3)投機か否かの差は、一定期間経過後に手じまって利益を確定するか否かの差である。これは、投機家の意図の問題であり、データで検証することは不可能だ。
(4)金利は、投機可能性に影響を与える。日本の金利が低下すると、円安投機を誘発しやすくなる。
(5)価格の乱高下は、安倍晋三内閣の経済政策が必然的に引き起こしたものだ。これまでの政策方向からの転換が求められる。

(注1)直物(じきもの:スポット)は、契約した日から2日以内に受け渡しをする取引。先物(フォワード)とは、将来の一定期日に受け渡しをする取引。なお、株式や商品の場合には、「現物」と「先物」という言葉が用いられる。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

------------最新経済データがすぐわかる!------------
『野口悠紀雄 使える!「経済データ」への道』


野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

日本銀行が新しい金融政策を決定した。今後2年間でマネタリーベースを2倍に増加させ、消費者物価指数上昇率を2%にするとしている。これを受けて、「円安が進行して輸出が増大する。輸出関連企業の利益が増大し、株価が上がる。日本経済は長く続いた停滞から脱却しようとしている」と考えている人が多い。果たして、この期待は、実現されるだろうか?

「野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」」

⇒バックナンバー一覧