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日本経済の憂鬱
【第3回】 2013年7月2日
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佐和隆光

アベノミクスはハードヘッドか、ソフトヘッドか?

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著名なケインズ経済学者アラン・ブラインダーは、効率性と公正さの軸で経済政策を類別する。彼が望ましいとするのは“ハードヘッド&ソフトハート”、すなわち効率性が高く公正さを重んじた政策の採択だが、果たしてアベノミクスは…?

ハードヘッド&ソフトハート

 各紙誌をにぎわすリフレ派と反リフレ派の論争は、アラン・ブラインダー(1945〜)のいう「政策採択の経験則」を想い起こさせる。ブラインダー・プリンストン大学教授は、ビル・クリントン政権(1993.1〜2001.1)のもとで、大統領経済諮問委員会(CEA)委員、FRB副議長をつとめ、数々の優れた理論的業績をあげている著名なケインズ経済学者である。

 ブラインダーはまた、『ハードヘッド ソフトハート』(佐和隆光訳、TBSブリタニカ、1988年)と題する啓蒙的著作を世に問い、次のようにいっている。

 ハードヘッドな経済政策とは「効率性の原理」に基づくそれである。他方、ソフトハートな経済政策とは「公正の原理」に基づくそれである。伝統的な共和党(保守派)の経済政策はハードヘッド・ハードハート、すなわち、効率一辺倒で弱者への思いやりを欠く。これに対し、伝統的な民主党(リベラル派)の経済政策はソフトヘッド・ソフトハート、すなわち公正を重んじるあまり、非効率を温存しがちである。ケインズ経済学者のブラインダーが望ましいとするのは、ハードヘッド・ソフトハートな経済政策である。

 実際の政策はどうであったか。たとえば、1981年から1989年まで米国大統領を務めたロナルド・レーガンの経済政策「レーガノミクス」はソフトヘッド・ハードハートであった、とブラインダーは診断をくだす。たしかに、レーガノミクスは、市場経済の効率性を十分生かしきっていない、という意味でソフトヘッド。その半面、弱者に対してきびしい保守派の姿勢だけは断固つらぬかれたという意味で、正真正銘のハードハートだった。レーガン大統領の経済政策の理論的支柱といわれたサプライ・サイド・エコノミクス、マネタリズム、合理的期待形成学派などもまた、ソフトヘッド・ハードハートな経済学としてブラインダーは一蹴する。

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佐和隆光(さわ・たかみつ) 滋賀大学長。京都大学名誉教授。専攻は計量経済学、エネルギー・環境経済学。経済学博士(東京大学、1971年)。

1942年和歌山県生まれ。東京大学大学院経済学研究科修士課程修了後、同大学助手、1969年に京都大学経済研究所助教授、スタンフォード大学研究員、イリノイ大学客員教授などを経て80年より京都大学経済研究所教授。京都大学経済研究所所長、京都大学大学院エネルギー科学研究科教授、国立情報学研究所副所長などのほか、国民生活審議会、交通政策審議会、中央環境審議会の各委員を歴任。1976年よりEconometric SocietyのFellow。1995年より2005年まで環境経済政策学会会長。2007年11月紫綬褒章受章。『計量経済学の基礎』(東洋経済新報社、1970年度日経・経済図書文化賞受賞)をはじめ、『経済学とは何だろうか』(岩波書店、1982年)、『平成不況の政治経済学』(中央公論社、1994年)、『漂流する資本主義 危機の政治経済学』(ダイヤモンド社、1999年)、『グリーン資本主義』(岩波書店、2009年)など著書多数。


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「日本経済の憂鬱」

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