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震災復興「最前線」の知られざる現実 
警戒区域が解除された富岡町のいま【後編】
――対談 富岡町長・遠藤勝也×社会学者・開沼博

開沼 博 [社会学者]
2013年7月3日
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震災以来、福島第一原発から半径20キロ圏内は「警戒区域」とされ、原則立ち入りが禁止されていた。しかし、今年に入って、相次いでその再編が進み、現在は昼間の家の片付け等の立ち入りが認められるようになっている。町全体が警戒区域にすっぽり入り、復旧・復興を進めようにも、2年間にわたってそれが叶わなかった富岡町は、警戒区域解除後、立ち入り可能になった地域も多い。ガレキの片付けなどはもちろん、補償の促進、避難へのケア、放射線対策、産業・生活インフラの回復などを早急かつ具体的に進めるべき状況にある富岡町は、現時点での「復興の最前線」にあると見ることもできよう。警戒区域が解除されたいま、富岡町で4期町長を務め、今も震災に立ち向かい続けている遠藤勝也氏は何を考えているのか。6月23日に実施された町政報告会で町長の真意に迫った。(開沼博)

富岡に「帰る人」「帰らない人」、それぞれへの施策

開沼 一言で復興と言っても、震災の直後と、震災から1年目、2年目と常に状況は変わっているわけですよね。壊れていた水道など、復旧するインフラが一部にある一方で、2年間放っていた家が傷み、壊れてもう人が住めないという状況もできています。

 【前編】では、帰る方と一定期間帰らない、または帰ることを考えていないという方が分かれるというアンケート結果の話が出ていました。そういった意味では、帰る方への政策と帰らないという方への政策の両方が必要な状況になっていると思います。まず、「帰る」と言っている方に向けた政策について教えてください。

えんどう・かつや
1939年生まれ、福島県富岡町出身。東京農業大学農学部卒。1962年福島県職員。1988年富岡町議会議員初当選。1997年より富岡町長。以降、連続4期町長を務め現在に至る。 Photo by Kossy

遠藤 まず1つは、解除準備区域から除染をしながら、インフラ復旧ですね。上下水道、道路、橋梁等々を復旧していく。それから常磐線も2年以内で復旧するようになります。これはJRとの話し合いの中で決めました。常磐道は来年3月に常磐富岡ICまでつながります。

 また、インフラ問題と同時に、生活関連の環境整備が不可欠です。町民が帰る前に、除染やインフラに関わる作業員が町内に宿泊するわけです。そういった方が病気やケガをすると、医療の再開は喫緊の課題です。それに警察署や消防署、あるいは県の出先機関が富岡に集約していますので、それらの機関を富岡で再開する。

開沼 大熊・双葉のように、今も、基本的には立ち入りができない帰還困難区域を前にして、復興の最前線にもなるわけですね。

遠藤 あるいは、東京電力の復興本社が今Jヴィレッジにありますが、そのうち明け渡さなければなりません。その先の移動先は富岡になるわけです。商業区域、銀行など、最低限の生活環境も準備する必要があり、それは除染と平行してやらなければならない。帰る人のために必要だし、また、帰らない人については、例えば狭い仮設住宅で生活している人のために災害公営住宅を早く建設して移動してもらう。

 あるいは、借上住宅についても災害救助法の中で何年まで担保してくれるのか明確にするなど、安全と安心感を与えることが重要です。孤独の問題、心のケアの問題、福祉の問題がもっと充実して、帰れない人や帰らない人に情報発信をしながら行き届いた対応をすることも不可欠であろうと思います。

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開沼 博(かいぬま・ひろし) [社会学者]

1984年、福島県いわき市生まれ。東京大学文学部卒。同大学院学際情報学府修士課程修了。現在、同博士課程在籍。福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任研究員。専攻は社会学。学術誌のほか、「文藝春秋」「AERA」などの媒体にルポ・評論・書評などを執筆。
著書に『漂白される社会』(ダイヤモンド社)、『はじめての福島学』(イースト・プレス)、『「フクシマ」論 原子力ムラはなぜ生まれたのか』(青土社)、『地方の論理 フクシマから考える日本の未来』(同、佐藤栄佐久との共著)、『フクシマの正義 「日本の変わらなさ」との闘い』(幻冬舎)『「原発避難」論 避難の実像からセカンドタウン、故郷再生まで』(明石書店、編著)など。
第65回毎日出版文化賞人文・社会部門、第32回エネルギーフォーラム賞特別賞。

 


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