アベノミクスの正否が参院選の論点となりつつある感があります。アベノミクスによって株価が大幅に上昇し、経済指標も徐々に改善しつつあることを考えると、大胆な金融緩和というマクロ政策は評価すべきですが、改革を進めているかという観点からは、様々な綻びが目立つようになってきました。今週はその典型例を2つ紹介しましょう。

骨抜きとなった公務員制度改革

 その1つは公務員制度改革です。公務員制度改革については、官邸主導の幹部人事を実現するためにも、第一次安倍内閣のときから内閣人事局の創設が数年来の重要課題となっています。

 そこで、稲田行改担当大臣は5月24日の閣僚懇談会で、「内閣人事局設置を含む国家公務員制度改革の全体像を取りまとめ、6月を目途に開催する国家公務員制度改革推進本部で正式決定する」方針を示しました。

 しかし、6月28日に開催された国家公務員制度改革推進本部では、結局“基本方針”しか示されませんでした。しかも、その内容は、公務員制度改革を嫌がる官僚の抵抗によって骨抜きにされています。

 公務員制度に関する権限は人事院、総務省、財務省という3省庁に分散しているため、それら3省庁の権限をすべて内閣人事局に移管する必要があり、当初の構想もそうなっていました。

 しかし、麻生政権当時に国会提出された法案(通称“甘利法案”)では、人事院と総務省の権限のみを移管するという不十分な内容となってしまったのですが、今回の基本方針はそれを踏襲しようとしていました。

 それだけでも論外ですが、それに加え、“関係省庁や与党が難色を示した”結果、それらの省庁の権限を移管するかを含めた具体的な制度設計は参院選後に先送りとなってしまったのです。