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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

「決められない政治」を批判する前に――
安倍政権半年の「決断なき政治」を振り返る

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第63回】 2013年7月5日
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 通常国会の会期末、参院本会議で「生活」「みどりの風」「社民」の3党が提出した安倍晋三首相への問責決議が賛成多数で可決した。「電気事業法改正案」「生活保護法改正案」「海賊多発海域における日本船舶に武装警備員を乗船させる特別措置法案」など、前日まで成立が見込まれていた多くの重要法案が廃案となった。

 野党は、参院選に向けての「得点稼ぎ」を狙ったのだろうが、完全に失敗に終わった。なにより、野党が「政局に走って重要法案成立を阻止した」という印象を国民が強く持ってしまった。特に、民主党が受けたダメージは大きい。「電気事業法改正案」は、電力システム改革を進めるもので、元々民主党政権時代から検討されてきた政策だ。民主党は自公両党と修正合意し、法案成立がほぼ固まっていた。それを廃案させてしまったのだから、まったく弁解のしようがない。

 安倍首相は「これこそが『ねじれ国会』の象徴」と厳しく批判し、政治の停滞を打破するため参院選で過半数を獲得し、「決められない政治」を打破する決意を改めて強調した。

安倍首相の「決断なき政治」(1):
金融政策は「日銀の責任」

 だが、この連載では安倍首相の政治姿勢を徹底的に批判し続けてきた。歴代政権が苦心惨憺取り組んできた財政再建や構造改革のための「国民に痛みを強いる政策」を完全に避けているからだ(第58回・P2を参照のこと)。そして、アベノミクスは「指導力も政治力も必要ない、政策全体へ配慮する知恵も必要ない、誰も反対しない政策の羅列」となっている(第52回を参照のこと)。「決められない政治」と野党を批判する前に、この安倍首相の「決断なき政治」こそ、批判されてしかるべきではないか。

 まず、アベノミクス3本の矢の1本目、金融政策である。安倍政権は、円高・デフレ脱却に向けて次に、2%の物価上昇率目標を明記し、一体で金融緩和や規制緩和を進め早期の目標実現を目指すとする政府・日銀の共同声明を決定した。また、4月には黒田東彦日銀新総裁が「異次元の金融政策」を標榜し、大規模な金融緩和を決定した。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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