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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

異次元緩和措置は機能しえない
――銀行貸出や設備投資との関連で考える

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第15回】 2013年8月1日
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 日本銀行が4月に導入した異次元緩和措置は、そもそも機能するものなのだろうか? 以下では、この問題を、銀行貸出や設備投資との関連で考えることとしたい。

銀行貸出が毎年60兆円の数倍増加する必要がある

 金融緩和政策は、つぎのようなルートを経て、設備投資の拡大をもたらすと考えられている。

マネタリーベースの増大 ⇒ マネーストックの増大 ⇒ マネーに対する需給関係が緩和 ⇒ 実質金利の低下 ⇒ 設備投資の資金コストの低下 ⇒ 設備投資の増加

 日本銀行は、異次元金融緩和において、マネタリーベースを年間60兆円程度増加させるとした。この大部分は日銀当座預金と考えてよい。

 教科書的な説明によれば、マネタリーベースが拡大すると、それに数倍する規模でマネーストックが増大する。マネーストックの大部分は銀行預金である。そして、銀行預金の増加は、銀行貸出の増加によって引き起こされる(信用創造メカニズム)。

 したがって、異次元緩和措置が機能するためには、銀行貸出が、年間60兆円の数倍のオーダーで増加する必要があるわけだ。

 では、どの程度の貸出の伸びがあれば、この目標が達成できるだろうか?

 現在、銀行貸出平均残高は、銀行計で約400兆円である。これが15%増加すれば60兆円の増加となるし、20%増加すれば80兆円の増加となるわけだ。

 貸出の現実の推移は、図表1に示すとおりである。

 総貸出平残(銀行計)の前年比は、2009年頃には4%程度にも達したことがある。最近でも、異次元緩和策導入前に2%近くになっていた。しかし、これでは不十分とされていたわけだから、これを顕著に上回る伸びを実現することが必要だろう。

 なお、総貸出平残の対前年比は、13年4月以降2%を超えている。これは、異次元緩和策のためであるように見える。

 しかし、そうではない。残高はすでに1月頃までにかなり高くなっていたのであり、この影響で4月以降の対前年比が高い値となったのだ。残高は、3月末~4月末をピークとしてむしろ減少しつつあることに注意が必要だ(図表2参照)。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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