総務省の周波数割り当てに怒りを爆発させたソフトバンク。だが、その主張はどうも不可解である。怒りの真意を探っていけば、同社が考える世界戦略の根幹が浮き彫りになる。
Photo by Takeshi Kojima
節電のために蒸し暑く、顔も見通せない薄暗い総務省の廊下で、7月26日夜、ソフトバンクの孫正義社長がほえまくった。
「まさか彼らが20メガヘルツで申請してくるとは思わなかった。どうしてそこまで強気だったのか。ひょっとしたら、出来レースではないのか。結果はあまりにも不公平ではないか!」
孫社長らは、1時間以上にもわたり、報道関係者を前に総務省の対応について不満をぶちまけた。時折汗をぬぐいながらも、その話は止まらなかった。総務省への行政訴訟もちらつかせるなど、穏やかではない。孫社長はいったい何に怒っているのか。
実はその直前、総務省では新たな周波数の割り当てを決める重要な審議会が開かれていた。そこでは2.5ギガヘルツ帯の20メガヘルツ幅をどこに渡すのかという審査が行われていたのだ。
もともとこの帯域は、KDDI系のUQコミュニケーションズが30メガヘルツ幅を持ち、高速データ通信サービス「WiMAX(ワイマックス)」向けに使っている。また、ソフトバンク系のワイヤレスシティプランニングも同じく30メガヘルツ幅(うち10メガヘルツ幅は制限あり)を保有して「AXGP」というサービスに使用している。要は2社とも高速データ通信用に使っている帯域である。
今回、この帯域で“出物”があった。総務省は周波数再編の一環として新たな周波数の割り当てをするための募集をかけ、2社がこれに応じたのだ。通信事業者にとって周波数の確保は、将来の収益にじかにつながるため事業の根幹を成す重要な要素となる。