このシュンペーターの代表作は、彼の経済観から理論的枠組みまで、のちの著書の主題まで含んだもので、お忙しい方は本書だけ読めばシュンペーターの経済学の概要を知ることができる。もっとも、本書を読み通すこともなかなか難しいかもしれないので、本稿で重要部分をダイジェストしておこう。本書はシュンペーターの著書では現在まで強い影響を維持している唯一の書物である。なかでも第二章がポイントとなる。
シュンペーターが考える経済発展とは、第一に内生的、自発的に生まれる経済の循環的変化であり、第二に非連続的な変化である。内生的な変化とは、「経済が自分自身のなかから生み出す経済生活の循環の変化のことであって、外部からの衝撃によって動かされた変化ではなく、自分自身に委ねられた経済に起こる変化にしぼられる」と、伊達邦春先生は述べている(★注1)。
そして、経済発展の駆動力は企業者によるイノベーション(新結合の遂行)にある、というわけだ。第二章で有名なイノベーションの5分類が登場する。第二章の構成はこうなっている。
第二章 経済発展の根本現象
一、社会発展の概念について
二、新結合の遂行としての経済発展 五つの場合
「発展」はいかにして金融されるか 銀行家の機能
三、根本現象―企業、企業者 「新結合の遂行」はなぜ特殊な種類の機能であるのか
ほか(以上、抜粋)
イノベーションの5分類とは、清成忠男先生の翻訳によるとこうなる(前回参照)。
(1)新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現
(2)新しい生産方法の導入
(3)産業の新しい組織の創出
(4)新しい販売市場の開拓
(5)新しい買い付け先の開拓
まとめると以上のとおりだが、原文(訳文)はもう少し長い。
シュンペーターは新結合が非連続的にのみ出現することを何度も強調している。連続的な変化はすなわち均衡的静態体系であり、資本主義のダイナミズム(動態)はここではありえない、というわけだ。