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岸博幸のクリエイティブ国富論

デトロイト市の破綻から日本が学ぶべき教訓

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第236回】 2013年8月23日
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 米国の主要都市の1つであるデトロイト市が財政破綻を宣言してから1ヵ月が経ちました。本件に関する最近の報道は、公務員の年金給付などレガシーコストを削減して債務を圧縮できるかという点が目立ちますが、デトロイトと同様に破綻の危機に瀕する自治体が多い日本としては、デトロイトから学ぶべき別の点があるのではないでしょうか。

破綻したデトロイトと繁栄するシカゴの差

 デトロイトの財政破綻の原因として言われるのは、地元を代表する産業である自動車産業の衰退です。それに伴い、地元の人口が減少の一途を辿り、税収も激減して大幅な債務超過になったからです。

 しかし、より本質的な破綻の原因は、長年にわたるデトロイト市の経済運営の失敗です。米国の自動車産業の最盛期(1950年代)から半世紀以上が経つ中で、米国の自動車産業のイノベーション能力の低下は既に明らかだったのですから、それに代わる雇用への波及効果の高い新たなイノベーション部門を地元で育てるか誘致すべきでした。しかし、それに失敗してしまったために破綻へと至ったのです。

 それは、同じ米国中西部の都市であるシカゴと比較すると非常に明らかとなります。シカゴもデトロイトと同様に1950年代、60年代は製造業で栄えていました。そして、1969年の家計所得の中位値はデトロイトが3万4972ドルであるのに対して、シカゴは3万3674ドルと、ほぼ同じでした。

 その後、新興国の製造業が成長するに伴い、両市の製造業も衰退傾向を辿っていくのですが、デトロイトと異なりシカゴでは、1990年代以降にビジネス・サービス、金融、教育、ヘルスケアなどの高度なサービス分野が地域の産業として成長し、そこでの雇用も増加していきました。シカゴは地域のイノベーション部門を上手に製造業からサービス業へとシフトさせたのです。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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