法人税減税に関して、麻生財務大臣は、「赤字法人の割合が70%を超す状況では、減税しても効果がない」旨の発言をされている。しかし、わが国法人の赤字比率が高い最大の原因は、その大部分を占める同族会社の「タックスプラニング」にあると考えられる。資本金1億円超の会社の赤字法人割合は半分程度で、わが国の法人所得の82%を稼ぎ出している。同族会社の赤字法人対策をしっかり取りつつ、わが国の法人所得税の大半を負担している資本金1億円超の法人への減税は、経済の空洞化を防止する観点から有効でかつ必要だ。

法人税減税と赤字法人の議論

 麻生財務大臣は、法人税減税論に対して「わが国の企業の7割が赤字法人だから、法人税減税を行っても効果はない」旨の発言をしておられる。減税の効果が及ぶのはわが国の法人のわずか3割、ということなので、なるほど減税は効果がない、ということになり、うなずく論者も少なくない。

 しかしこの2つの問題は、一直線につながっているわけではない。以下、わが国では7割の法人が赤字であるという事実と、だから法人税減税は効果がない、ということの関連について考えてみたい。

個人事業より法人は税制上不利なはず

 このことを考えるために、まずわが国には、なぜ7割もの赤字法人が存在するのか、という点から議論を始めたい。

 一般に、事業を始めようという場合、法人形態と個人形態の2つが考えられるが、法人形態を選ぶと、法人段階で得た利益には法人税が課せられ、税引き後の利益を配当に回せば、配当に対して再び所得課税が課せられ、二度課税(二重課税)となるので税制上不利である。

 個人形態で事業を行えば、このような二度課税は生じない。税引き後の利益はすべてそのまま事業主の所得(税引き後)になる。

 このように、法人形態での事業は、個人形態に比べて圧倒的に不利なはずであるにもかかわらず、わが国の事業形態には圧倒的に法人形態が多い(俗に言う、「法人成り」)。これはなぜなのか。