このまま安倍晋三政権が(1)消費増税の予定通りの実施、(2)原発の全面的再稼働、(3)集団的自衛権行使のための憲法解釈の変更、(4)TPPの年内合意を強行すれば、おそらく内閣支持率は遠からず大幅に急落して政権運営がきわめて困難になるに違いない。

 これらはほぼ同時進行で進んでいるので、今年末が大きな山場となるだろう。

 確かに安倍政権は、衆参の安定多数を基盤として政策も法案も思いのままに通すことができるように見える。だが政治は決してそういうことにはならない。安定多数であっても支持率が30%を割れば、政策も法案も暗礁に乗り上げて一歩も進むことができなくなる。自民党内、与党間に亀裂が起こって内部抗争を生み、内閣が漂流することにもなりかねない。

 私もそうだが、安倍首相への期待感は、やはり「成長と改革」にある。未だその期待は消えたとは言えないが、前述4つの強行によってたちまち色あせてしまうだろう。

「国益のため」という言葉ほど
いかがわしいものはない

 問題は、この4つの推進力になっているのが政治ではなく行政であり、政治家ではなく官僚だということが日増しに明らかになってきていることだ。

 すべては「国益のため」と強調されるが、この国益という言葉は実にいかがわしい言葉だ。むやみに“国益”を標榜して強行しようとする人は、そのほとんどが省益などの“組織益”のために動いている。

 一体、国益と言っても、目先の国益と長期的な国益には大きな違いがあり、それどころかしばしば逆の場合さえある。

 今回のTPP交渉についても、来年の中間選挙を見据えて年内合意にこだわる米国に追随。普天間問題のマイナスをカバーしたり、尖閣問題への支援を期待しているように見える。