既報のとおり、NTTドコモがiPhoneを取り扱うことが決定した。このことを受け、今回は、特別寄稿というかたちで、モバイル端末市場の現状および端末メーカーのビジネスを検証してみたい。前回(連載第5回)の文末で予告した「モバイル広告大賞」のマーケティング部門の検証については機会を改めて掲載する。少々お待ちいただきたい。

NECやパナソニックの撤退に学ぶべきもの

 日本時間9月11日2:00。アップルが行った説明会において、NTTドコモがiPhoneを扱うことが淡々と発表された。これはフィーチャーフォン時代との決別をドコモがしたと捉えることもできるだろう。

 本件に関連して憶測記事が飛び交う中、NECは今年7月31日をもって、スマートフォンの新規開発を中止、現在販売中の機種を最後に生産と販売も終了。パナソニックもまた、国内の個人向けスマートフォン事業から撤退すると決定した。携帯電話基地局事業も売却する方針で、携帯関連事業を抜本的に見直し、経営再建につなげるとしている。今後は企業向け端末を強化し、個人向けスマートフォンは外部企業に生産委託した製品の海外での販売に留めるようだ。

 両社とも、フィーチャーフォンについては開発と生産を続けるが、NTTドコモを支えた初期movaシリーズのメンバーでは富士通ただ1社だけがスマートフォンの開発を続けることになるわけだ。

 NECの言葉を借りれば、スマートフォン市場でのシェアが獲得できず、出荷台数が減少、スケールメリットがなくなった。そのため、業務改善の見込みが立たずに撤退するということのようだ。

 残念ながら、ある意味これは、予想できた撤退と言うことができる。量販店の店頭に行ってみればわかるはずだ。スクリーンサイズ、アイコン、スペック、薄さ、軽さ、デザインもほとんど同じ……。何を選んで買えばよいのか?もはやユーザー側に違いは感じられない全くの横並び商品だ。行きつくところは、価格競争。同じアンドロイド端末を各社が小さな差異で各々作っている、そんな市場になってしまった。

 あらゆる電化製品の例に漏れず、スマートフォンという技術集約性の極めて高い商品でさえ、サイクルの短いモデルチェンジ合戦の末に、すでに差別化のしにくい飽和期に突入してしまった観がある。白物家電は言うに及ばず、テレビや、DVD、ブルーレイ、ハードディスクといった録画機器などと同様だ。

 もはや差別化ができず、価格競争しかマーケティング戦略がないのであれば、撤退という戦略を選ぶのは間違いではない。そうでなければ、企業はますます疲弊してしまう。