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《WANTS起点》でビジネスを設計する時代 水口哲也

ソーシャルメディアの裏で揺れる
人間の欲求を知れば、
ニーズ時代の終焉が見える

水口哲也 [メディアデザイナー/Mizuguchi Creative Office代表/慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)特任教授]
【第2回】 2013年10月2日
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欲求=WANTS/ウォンツという人間の本質的なエネルギーのようなものが、ともすれば私たちのビジネス発想からすっかりすり抜けてしまっていて、なんとなくテクノロジー主導の開発に陥るケースが少なくない。そしてウォンツ主導のビジネス開発、ハードではなくその背後にあるサービスを想像する力、人々の欲求の道筋をデザインするプロセス、これらが重要なことを前回提起したが、今回は、その「ニーズからウォンツヘ」というパラダイムの転換ともいうべき現象が、なぜ起こっているのかについて、メディアデザイナーとしての視点から整理してみたい。今までのような開発プロセスでは、もはやイノベーションは起こせなくなっているのだ。

迷走するプロジェクト……
「一体、誰のニーズなんだ?」

 僕らは「ニーズ」という言葉をよく口にする。社会的ニーズ、大衆のニーズ、消費者のニーズ……。「この商品のニーズ、本当にあるのか?」「もう少しニーズを洗い出してみよう」とか、そんな感じだ。多くの人がニーズに、そのアイデアの確信や、発想の裏付けを求めてきた。

 決定者が判断できない場合、主観的な直感やインスピレーションより、客観的な説得力が欲しくなる。ニーズの再検証に時間を費やすが、なんだかしっくりこない。最初のアイデアでは盛り上がったのに、ニーズの検証をやってるうちに、どんどんその企画の輝きが失われていく。あるいは、プロジェクトが迷走していく。そんな経験を持っている人は多いと思う。

 あるいは、ニーズやマーケティングのデータから企画を組み上げようとしても、なんだかふわっとして、当たり前の発想の域を出ず、心に響く力がない。欲しいのは、新しいサービスやプロダクトを生み出すのに役立つ理論や着想なのだが、ニーズという言葉にその力がない。最近、そう感じる人も多いと思う。一体、誰のニーズなんだ?それがわからずに、ぐるぐると頭の中でペルソナが回る。

 この先、「ニーズを探り当てる」という発想から、未来のイノベーションは生まれてくるだろうか? 僕は懐疑的だ。これからの時代、もはやニーズの発想から革新的なプロダクトやサービスは生まれてこないのではないかと思っている。その理由を2つ述べる。

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水口哲也 [メディアデザイナー/Mizuguchi Creative Office代表/慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)特任教授]

メディアデザイナー/Mizuguchi Creative Office代表/慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)特任教授。人間の欲求とメディアの関係性をリサーチしながら、ビデオゲーム、音楽、映像、プロダクトデザインなどさまざまな分野でグローバルな創作活動を続けている。ゲームの代表作として、『セガラリー』(1994)、『スペースチャンネル5』(1999)、『Rez』(2001)、『ルミネス』(2004)、『Child of Eden』(2010) など。また音楽ユニット・元気ロケッツ(Genki Rockets)のプロデュースをはじめ、作詞家・映像作家としての顔も併せ持つ。 2002年欧州アルスエレクトロニカにおいてインタラクティブアート部門Honorary Mention、経済産業省デジタルコンテンツグランプリ・エンターテインメント部門サウンドデザイン賞、文化庁メディア芸術祭特別賞などを受賞。 2006年には全米プロデューサー協会(PGA)とHollywood Reporter誌が合同で選ぶ「Digital 50」(世界で注目すべきデジタル系イノベイター50人)の1人に選出される。
 
「水口哲也の仕事とプロフィール、そしてブログ」 www.mzgc.net

 


《WANTS起点》でビジネスを設計する時代 水口哲也

あらゆる生活シーンにおいて、欲求=WANTSは人間の行動や情動の源泉であるにもかかわらず、私たちは普段、どのように欲求が人間の生活や社会に影響しているかなどとは考えない。それは無意識の世界で起こることだからだ。しかし筆者は、つねに無意識の情動である人間の欲求と対峙して、その道筋をどうつければ、どんな感情を、どういうふうに導き出せるか、の試行錯誤を繰り返しながら仕事を続けてきた。現在、筆者が取り組もうとしているメディアデザインの応用開発を示すべく、現代人の欲求=WANTSに新たな光を当てて、《WANTS起点》で時代を切り開くイノベーションへの筋道を示してみたい。

「《WANTS起点》でビジネスを設計する時代 水口哲也」

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