創造的思考を生み出すための
4つの前提と10の方策

 第3章から第10章までは研究スタッフによる詳細な「無意識」の研究が続きます。これは本書を読んでいただくとして、第11章でザルトマンはこう述べています。

消費者の無意識を探ることは、効果的なマーケティング・コミュニケーションや商品、サービスを開発するための第一歩にすぎない。さらにマーケターは、顧客やマーケティングに関する自分自身の無意識をも理解し、全く新しい学際的な考え方をする必要がある。(275ページ)

 そしてマーケター用に「創造的思考のための4つの前提と10の方策」を提起します。非常に示唆に富む指摘と詳細なハウツーが述べられていますが、ここではその項目だけを挙げます。

 まず、前提から。

【4つの前提】
1. 創造的な思考と習慣的な思考とは、同じ認知プロセスに基づいている
2. 組織の環境がマネジャーの創造性に大きな影響を与える
3. マーケターにとって有益な、消費者に関する知識は、マーケティングという専門分野の外にある
4. 様々な専門分野を結びつける共有テーマを見つける
(276-279ページ)

【10の方策(行動指針)】
1. 現状に安住せず、絶えず変化を求めよ
2. 「角の歪んだ牛」を不思議に思え
3. 偶然のデータで遊べ
4. 終わりを始まりと思え
5. 自分を時代遅れにしてしまえ
6. 「同じヒヨコ」ばかり可愛がるな
7. 冷静に情熱を抱け
8. 自らの信念を主張せよ
9. 問題の核心を突く質問をせよ
10. 結論を早まるな
(282ページ)

 全体を通して、「使用理論」から脱却して心を自由にし、顧客と自分の無意識の神経科学的メカニズムを理解し、まったく新しい思考法に到達するように導かれます。

 まるでニーチェを読んでいるかのように、先入観は突き崩され、脳に酸素が送り込まれるような読後感を覚える一冊です。


◇今回の書籍 30/100冊目
『心脳マーケティング――顧客の無意識を解き明かす』

消費者を心理学と脳科学で動かす!<br />マーケターの思考を変えた革新的なアプローチ

ハーバード大学の英知を結集した複合領域アプローチから生まれた、心理学と脳科学で消費者心理を解析するポストモダン・マーケティング論。

ジェラルド・ザルトマン 著
藤川佳則/阿久津聡 訳
定価(税込)2,940円


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