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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

異次元緩和政策は、国債を当座預金に変えただけ

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第23回】 2013年10月3日
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 異次元緩和によって、マネタリーベースは著しく増えたが、マネーストックはそれほど増えなかった。その意味で、異次元緩和は空回りしている。こうなるのは、貸出が増えないからだ。前回前々回でこのように述べた。では、銀行の資産構成は、異次元緩和によってどのように変化したのだろうか?

 以下では、日本銀行の資金循環統計によって、国内銀行の資産の変化を見ることとしよう。

金融緩和で貸出は
わずかしか増えず

 銀行の資産のうち日銀預け金の残高は、異次元金融緩和政策の結果、2013年4-6月期において、過去に比べて異常なほど増加した。この状況は、図表1に示すとおりだ。

 01年に導入された量的緩和政策、10年に導入された包括的金融緩和政策のときにも増えたのだが、導入前に比べて10兆円程度の増加である。ところが、今回は、13年1-3月期から18.5兆円増加している。12年10-12月期からの増加で見ると、28.3兆円増と、これまでの3倍近い増加を示している。今回の緩和措置が「異次元」であると言われたのは、このかぎりにおいては、そのとおりだ。

 これは、銀行の資産構成にどのような影響を与えただろうか?(なお、以下で「国債」とは、「国債・財融債」を指す。つまり、国庫短期証券は入らない)。

 13年1-3月期からの残高の差を見ると、日銀預け金の増18.5兆円に対して、貸出はわずかに3.3兆円増加したに過ぎない。しかも、増加の傾向が鈍化している。つまり、これまでと比べて、増加額が減少している。

 金融緩和をしたのだから、貸出はピッチを上げて増えていなければならないはずだ。しかし、現実には逆のことが起きているのだ。したがって、教科書的な意味での信用創造過程は生じていないと結論できる(なお、ここでは銀行勘定だけを見ている。銀行勘定と信託勘定の合計では、前回見たように貸出は減少している)。

 また、貸出増自体は、11年1-3月期から続いていることに注意が必要だ。異次元金融緩和政策は、貸出増を加速したわけではなく、むしろ、これまで生じていた増加を抑えたことになる。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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野口悠紀雄「日銀が引き金を引く日本崩壊」

日本銀行が新しい金融政策を決定した。今後2年間でマネタリーベースを2倍に増加させ、消費者物価指数上昇率を2%にするとしている。これを受けて、「円安が進行して輸出が増大する。輸出関連企業の利益が増大し、株価が上がる。日本経済は長く続いた停滞から脱却しようとしている」と考えている人が多い。果たして、この期待は、実現されるだろうか?

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