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3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

ドラッカーの言う
「改革の原理としての保守主義」とは何か

上田惇生
【第355回】 2013年10月15日
著者・コラム紹介バックナンバー
ダイヤモンド社刊
2100円

 「保守主義とは、明日のために、すでに存在するものを基盤とし、すでに知られている方法を使い、自由で機能する社会をもつための必要条件に反しないかたちで具体的な問題を解決していくという原理である。これ以外の原理では、すべて目を覆う結果をもたらすこと必定である」(ドラッカー名著集(10)『産業人の未来』)

 改革のためのドラッカーの方法論は、“保守主義”である。しかし、昔がよいとして昔を懐かしみ、昔に戻せという思想ではない。

 英語では、コンサーバティズムである。しかし、この英語にも、昔に戻せ、という保守反動的なニュアンスがある。そこで、“活力ある保守主義”という言い方がされたりする。ドラッカーも、これには困り、あるときは“正統保守主義”と言い、あるときは米国と英国の“伝統としての保守主義”という言い方をする。

 それは、第1に、過去のためのものではない。正統保守主義とは、「明日のため」のものである。あくまでも未来志向のものである。

 正統保守主義とは、第2に、なんらかの青写真に沿って社会を形成しようとするものではない。なんらかの万能薬を服さしめようとするものでもない。

 それは、ケース・バイ・ケースで問題を解いていこうとするものである。医学にしても、万能薬を求めているあいだは進歩しなかった。風邪には風邪、腹痛には腹痛の治療を求めてから急速な進歩が見られた。したがって、それは、「具体的な問題を解決していくものである」。

 正統保守主義とは、第3に、手持ちの道具、役に立つことが実証ずみの道具を使って問題を解こうとするものである。理想的な道具を新たに発明しようとしても無理である。「それは、既に存在するものを基盤とし、既に知られているものを使うものである」。

 かくしてドラッカーは、改革のための原理は、保守主義たるべしとする。

 「第一に、過去は復活しえないことを認識することが必要である。第二に、青写真と万能薬をあきらめ、目前の問題に対する有効な解決策をみつけるという、控え目で地味な仕事に満足することを知ることが必要である。第三に、使えるものは既に手にしているものだけであることを知ることが必要である」(『産業人の未来』)

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上田惇生(うえだ・あつお) 

 

ものつくり大学名誉教授、立命館大学客員教授。1938年生まれ。61年サウスジョージア大学経営学科留学、64年慶應義塾大学経済学部卒。経団連、経済広報センター、ものつくり大学を経て、現職。 ドラッカー教授の主要作品のすべてを翻訳、著書に『ドラッカー入門』『ドラッカー 時代を超える言葉』がある。ドラッカー自身からもっとも親しい友人、日本での分身とされてきた。ドラッカー学会(http://drucker-ws.org)初代代表(2005-2011)、現在学術顧問(2012-)。

 


3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言

マネジメントの父と称されたドラッカーの残した膨大な著作。世界最高の経営学者であったドラッカーの著作群の中から、そのエッセンスを紹介する。

「3分間ドラッカー 「経営学の巨人」の名言・至言」

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