うちの会社のスゴい商品をヒットさせる方法 石黒不二代
【第1回】 2013年10月30日
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石黒不二代 [ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO]

なぜ日本には「いい商品」を作っても
売れない企業が多いのか

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 たとえ、ヒット商品が開発できたとしても、単発では単なるヒット商品に終わっていきます。これでは、会社を救うばかりか、業績を乱高下させてしまい、企業の永続性を担保することはできません。マーケティングの本流は、商品やサービスという単体だけでなく、バリューチェーン全体で顧客に同じ体験を提供することです。冒頭でご紹介したアップルを例に、説明していきましょう。

 アップルは、iPodを売り始める前に、直販の小売店を作り始めていました。当時は、IT業界では直販の小売店を作らないことが常識になっていた時代でした。なぜなら、当時、最も成功していたコンピュータハードウェアメーカー・DELLは、既存の販売網で売るのではなく、ECやテレマーケティングによる直販で大成功していたからです。

 そうしたなかでジョブズが小売店を作り始めたのですから、周囲は反対しました。現在のアップルストアの原型です。コンセプトは一般の小売店とは一線を画していました。アップルのブランドにふさわしいシンプルでクールな外観を持ち、店内には製品に関するマンツーマンの技術サポートを受けられる「ジーニアスバー」を設けます。さらに、驚くべきなのは、あまりスマートではないレジを店内に配置せず、販売員がその場で会計をしてくれる仕組みを取りました。斬新な小売店舗展開といえるでしょう。

 そして同時に、アップルは「think different」というメッセージを掲げたコマーシャルを流し、ブランディングを行います。アインシュタインやキング牧師など、アップルが定義したクレイジーで、反逆者である人々が登場するCMです。「いいと言う人も悪いと言う人もいるけれど、言えることは、誰も彼らを無視することができない、なぜなら彼らは世の中を変えた人だから」のフレーズは、まさしく、アップルというものを体現するものでした

 アップルでは、こうしたブランディングや販売チャネルの変更をしながら、iPodのヒットをサポートしました。つまり、製品だけではなく、ブランドやチャネルというマーケティングのバリューチェーン全体で、この製品を革新的なものだ、と定義し、顧客接点のどこで顧客がアップルに接したとしても、体験の変化を促したのです。各部門のつながりが、ヒット商品を支え、統合的なマーケティングができなければ、ヒットは生まれません。

 「コト」を作ることは、これからの時代のヒット商品に絶対に必要な条件です。そのコトを製品に組み込むには、会社全体のサポートが必要で、例えば商品企画だけが独り歩きして頑張っても、宣伝、販売方法や売り場、カスタマーサービスなどのマーケティング全体の支援が整わなければ、素晴らしい製品であってもヒット商品にはなりません。マーケティングのすべてが統合されて相互で稼働してこそ、ヒット商品が生まれます。

 第2回目以降は、それぞれの部門に落とし込んで、どうすれば商品をヒットさせられるかを探っていきます。次回はまず、マーケティング部門を見て行きましょう。

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石黒不二代 [ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO]

スタンフォード大学にてMBA取得後、シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立し、日米間の技術移転等に従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、ウェブを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。

うちの会社のスゴい商品をヒットさせる方法 石黒不二代

こんなにすごい技術、製品がうちの会社にはあるのに、なぜ売れないんだろう…。これは多くの日本企業が直面している問題といえます。この連載では、インターネットが当たり前の時代において、経営の目線から自社の技術を生かしつつ、ユーザーに受け入れられてヒットする商品の作り方を解説していきます。

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