政府は、10月7日に開かれた社会保障審議会医療保険部会に、高額療養費の見直し案を提示して、2015年1月実施を目指したいという意向を示した。例えばアメリカでは、虫垂炎の手術を受けただけで100万円以上の請求書が送られてきた等という話をよく聞くが、わが国では高額療養費制度により、たとえ医療費が1000万円かかろうとも、個人の負担限度額は3割の300万円ではなく、1ヵ月で最大15万円程度に抑えられている。

 市民が安心して治療を受けられるという意味で、高額療養費制度が、わが国の医療保険制度の根幹を成すと言われる所以である。ちなみに2010年度で、約2兆円の高額療養費が支払われている。ところで政府は、高額療養費についてどのような改正を目指そうとしているのだろうか。

政府は3つの案を提示

 高額療養費については、8月6日に公表された社会保障制度改革国民会議報告書で、次のような方向が示されている。

・医療給付の重点化・効率化(療養の範囲の適正化等)
 (前略)高額療養費の所得区分について、よりきめ細やかな対応が可能となるよう細分化し、負担能力に応じた負担となるよう限度額を見直すことが必要である。上記のとおり、70~74 歳の医療費の自己負担に係る特例措置が見直されるのであれば、自己負担の上限についても、それに合わせた見直しが必要になるが、そのタイミングについては検討が必要になる。

 これを受けて政府は、8月21日の閣議で次のような決定を行った。

・保険給付の対象となる療養の範囲の適正化等について次に掲げる措置
 低所得者の負担に配慮しつつ行う、70歳から74歳までの者の一部負担金の取扱い及びこれと併せて検討する負担能力に応じた負担との観点からの高額療養費の見直し

 今回の政府案は、これらを受けたものでその概要は次のページの図版の通りである。