本誌2013年12月号(11月9日発売)の特集は「理想の会社」。特集論文「『無礼』が利益を蝕む」では、社内に横行する無礼な言動が従業員・顧客・生産性に悪影響を与えている実態を報告し、不作法を排除する方法を提示する。筆者らはHBR.ORGの関連記事で、不作法の一因が「上司という悪例」にあるとし、経験者の声と対処法を紹介する。


 従業員の態度を悪化させる要因は、何だろうか。

我々が行った調査のなかで、60%余りの人々が、みずからの態度を悪化させている原因は「過剰な仕事量」にあるとした。人に優しく接する時間などないのだという(注:筆者らは職場での無礼な態度について、数千人を対象に14年にわたる調査を行った。詳細は本誌2013年12月号「『無礼』が利益を蝕む」を参照)。私たちは精神的な負荷やストレスを抱えると、何に対しても十分な配慮ができなくなる。一緒に仕事をする同僚に対してさえも。

 以前のブログで、職場で無礼な態度を示したり被ったりした読者の経験談を募ったところ、次のようなコメントが寄せられた。

「私の働く会社では、実に多くの人たちが互いに失礼な態度を取っていました。みな、生まれつき礼儀を知らないというわけではありません。仕事でのストレスと、厳しすぎる企業文化のためです。息抜きをできる場所が、どこにもなかったのです」

 だが、人が職場で無礼になるのは、ストレスだけが原因ではない。我々がハーバード・ビジネス・レビュー誌の論文で述べたように、調査対象者の4人に1人は、上司の態度が悪いために自分の態度も悪くなっている。従業員は、職場で効果を発揮していると思われる慣行を察知し、良くも悪くもその先例を真似するのだ。何人かの読者は、上司は部下と距離を保つために失礼な態度を取っているとコメントした。誰がボスであるかを示し、境界線を引こうとしているのだ。また、上司がそのような態度を取ることを経営陣が奨励している、という読者もいた。たとえば、こんなコメントがあった。

「他人に敬意を持って接することは、我々の組織文化の一部ではあります。しかし私は経営幹部クラスの上司に、力を発揮するために嫌なやつになれ、意地悪な人間になれと言われました。自分たちを真似ろ、とまで言われたのです」

「あるマネジャーにアドバイスされました。周りにいる部下に、居心地が悪いと感じさせるようにしろ、と」

 調査対象者の20%は、従業員が互いにどう接するかを会社や上司は気にかけない、と答えた。苦情を言っても真剣に受け止めてもらえず、声をあげる人が痛い目にあうという意見もよく耳にした。ある人は、職場でのいじめを人事部に訴えるのは「ばかげている」とマネジャーに言われた、とコメントをくれた。また別の人は、「自分のやり方以外は認めない」という考えを曲げない同僚について報告してくれた。

「彼女はみんなに、私のことをひどく言います。・・・・・・彼女の考えすべてに賛成しないと、いつも個人攻撃してくるのです。・・・・・・もちろん上司には助けを求めましたが、もう何年ものあいだ、どの上司も「うまくやりなさい。そうしなければ、困るのはあなただ」と言うばかりでした。誰も彼女には手を出せないのです。彼女と協力して仕事をすることはあきらめました。会社の目標に貢献するためです。もう1つ残っている選択肢は会社を辞めることだけですが、まだその準備はできていません」