今回は、中堅不動産会社(社員数110人)の支店で、主任として支店長を支えていた男性(31歳)を取材した。男性は、上司である支店長からの扱いに不満を持ち、数ヵ月前に会社を辞めた。現在は他の不動産会社に移り、営業の仕事をしている。

 舞台は不動産会社ではあるが、男性がぶつかった問題は他の業界でもよく見かけるものだ。その根底には、上司がプレイングマネジャーであるという「働き方」に関する課題がある。ある意味、上司と部下の相性の問題として捉えるべきものではないと思う。

 プレイングマネジャーとは、管理職が部下の育成などのマネジメントだけではなく、1人のプレーヤーとしても仕事をすることを意味する。しかもプレーヤーとしての仕事量やノルマ(目標)は、部内で一番多い傾向がある。こうした体制は、ここ十数年、主に企業が人件費を減らす目的で増えている。

 その結果、上司と部下との意思疎通が不十分になり、企業社会では様々な問題が起きている。大きな問題は、管理職が現場の仕事に関わり続け、そこに時間をとられることで、部下の育成も人事評価も杜撰になってしまうことだ。今回のケースも、そうした課題を念頭に置いて読み進めていただくと、実態が見えてくると思う。読者諸氏にも一緒に考えてほしい。


Aさんの取材は杉並区で行われた

支店長なのにやるのは営業ばかり!
管理しないプレイングマネジャー

筆者 この秋に、不動産会社を退職されたのですね。そのあたりの経緯を教えてください。

A氏 上司だった支店長に、いいように使われていた。まさに「社畜」のようなもの。もう嫌だった。あんなところで働くのはヤバイ。

筆者 支店長はどのようなタイプの上司でしたか。