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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

女性を毒牙にかける病み深き痴漢・ストーカー社員
通勤電車の異常事件に見る「悶える職場」の一断面

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第37回】 2014年4月8日
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前回の「女性客にまで暴行されるコンビニ店員の“悶える格差”」 は、読者諸氏から大きな反響を得た。このケースのように、我々は街中でふと、普段はうかがい知れない「悶える職場」の一断面を目にし、その課題を深く考えさせられることがある。

 そのつながりで、今回は少々趣向を変え、「通勤電車」をテーマに取り上げたい。会社員が毎朝乗る通勤電車も、ある意味で職場の延長線上にある。そこでは、職場でストレスを抱え込んでいるであろう「悶える男性社員」によって、人知れず深刻な事件が引き起こされている。

 その1つが、痴漢やストーカー行為である。痴漢行為については、筆者は以前、実際の現場を目撃したことがあるが、前述の「コンビニ暴力事件」のときのように、警察に通報することはできなかった。

 なぜ会社員は、異常な行為に走ることがあるのか。そしてその背景には、企業社会が抱えるどんな課題が横たわっているのだろうか。

 読者諸氏も、一緒に考えてみてほしい。


筆者はなぜ勇気を出せなかったか?
満員電車で偶然遭遇した痴漢の現場

 春が訪れた。この時期になると、思い起こすことがある。2年前の4月、筆者は満員電車の中で、いわゆる「痴漢」を目撃した。

 男性の右手の指が、女子高生の左の胸にくっついていたのだ。あまりにも大胆であり、驚きで声を出すことができなかった。

 筆者は今でも罪悪感を感じているが、いざこうした光景に出くわすと、どうしたらよいかわからず、大きな声を出して痴漢をたしなめるなど、被害者を助ける行動はできなかった。また、満員電車の中だったこともあり、前回の記事のように警察に通報することもできなかった。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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