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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

「あんた、私をなめてるだろう?土下座しろよ!」
女性客にまで暴行されるコンビニ店員の“悶える格差”

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第36回】 2014年4月1日
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 今回は、あるコンビニエンスストアで筆者が目撃した、暴力事件を紹介しよう。女性の客から罵倒され、胸ぐらをつかまれ、足を蹴られ、負傷するアルバイトの店員がいた。

 この30代前半と思える男性は、そのとき限りなく無抵抗だった。暴力をふるい続ける30代後半に見える女性に、ひらすらお詫びをしていた。もう1人の男性店員も、うろたえるだけだった。2人は自ら警察に通報しようとせず、結局見かねた筆者が通報することになった。

 それを機に、筆者はこのアルバイトの男性と話をするようになった。彼の話からは、すでに30代になりながら企業に正社員として就職できず、アルバイトで低収入の日々を送る「生活苦」の現状が浮かび上がった。言わば彼は、これまで連載で紹介してきたような「悶える職場」以前のところで喘いでいるのだが、不満の声すら上げることができない。

 見ず知らずの女性客にまで殴られ、軽くあしらわれながらも、生活のために無抵抗を続けるしかないアルバイト社員は、なぜこのような境遇に陥ってしまったのか。彼はこうした「究極の悶える職場」から再起を図ることはできないのだろうか。男性への取材を基に、「格差社会」の現状と課題を筆者なりに分析してみたい。読者諸氏も、一緒に考えてみてほしい。


「女だからってなめるな! 土下座しろ」
筆者が目撃したあるコンビニの暴力事件

 「女だと思って、なめているだろう? 土下座しろよ。この野郎!」

 昨年12月、JR中央線のA駅南口から徒歩数分の交差点の角にあるコンビニエンスストアで、暴力事件が起きた。店内の隅々まで響く声を出していたのは、30代後半くらいの女性だった。

 顔は面長で、目鼻はモデルのようにはっきりとしている。化粧は比較的、濃い。靴は黒いヒールだった。背は、165センチ前後と長身の部類に入る。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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