イオンが2007年4月から発行している電子マネー「ワオン」を、この秋からコンビニエンスストア業界3位のファミリーマートが取り扱うことになった。
ほかに小売り業界で電子マネーを発行するのは、「ナナコ」のセブン&アイ・ホールディングス。小売り業界で収益力ナンバーワンのセブンに対抗して、総合スーパーで最大のライバルであるイオンと、コンビニで競合するファミリーマートが手を結んだかたちだ。
ワオンは1月20日時点で、発行枚数700万枚、利用可能店舗2万7000店、月間利用件数は1300万件である。
これに対して、同じ07年4月にセブンが発行したナナコは、発行枚数702万枚、利用可能店舗が2万2572店と、ここまでは大差ないが、月間利用件数は2900万件と、ワオンと2倍以上の開きがある。
この差は何か。コンビニの優劣である。
事前にチャージする方式の電子マネーは決済単価が低い。たとえば、ワオンでは平均決済単価は1850円である。
セブン&アイでは、ナナコの利用はコンビニのセブン―イレブン(売上高2兆5743億円)での利用が多く、決済単価の高いイトーヨーカ堂ではクレジットカード利用が多いという。
イオンはグループ傘下に、コンビニでは売上高規模が3000億円弱のミニストップしか抱えていないため、利用率が低いのだ。
「ワオンを始めたときからオープン政策を取ってきた。さすがにセブンに声をかけることはないが、グループ外で多くの企業に採用してくれるよう声をかけてきた」(横尾博・イオン執行役)。なかでも電子マネー利用が多く見込まれるコンビニは大本命だったはずだ。
ファミリーマートはマルチ端末のファミポートを抱えているため、親和性が高い。ファミリーマートの高田基生取締役は「ワオンが当社店舗網と同じく全国47都道府県に浸透していること、また、当社が弱い中高年や主婦層に強いことなどが導入するポイントになった」と説明している。
電子マネーだけの関係にとどまるのか。両社共に「資本提携などコンビニ連合に発展する構想は持っていない」と強調している。
だが、電子マネーの利用率に象徴されるように、イオンとセブンの業績の明暗を分けるのがコンビニである。09年2月期第3四半期決算の営業利益は、イオンが前年同期比18.3%減の659億円だったのに対し、セブンは4.4%増の2182億円だった。
コンビニは、スーパーより利益率が高いとはいえ、国内市場は飽和状態。「コンビニ業界では業界1位と2位しか生き残れない」というのが各社首脳の共通認識のようだ。業界再編の布石となる可能性は大いにある。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 須賀彩子)