ある女子高生が恋に破れた。ふさぎ込む中、心を癒すものを探した。はっと気がついた。そうだ、「オンガクスリ」があるじゃない――。
オンガクスリとは、自分の悩みを投稿すると、他のユーザーがその悩みの解決に効果がありそうな音楽を、ユーチューブのリンクを用いて紹介するソーシャルコミュニケーションサービスだ。彼女は早速「好きな人にフラれました。癒される音楽を教えてください」と投稿。すると、ネットの向こうで彼女の父親くらいの世代の男性が「こんなのどう?」と紹介してくれた。曲名はシンディ・ローパーの『トゥルー・カラーズ』。
「うわ、この曲、滅茶苦茶いいんだけど!」。普段西野カナなど今どきのJ-POPしか聴かない彼女は、未知の曲に耳を傾けながら、自分の心が癒されていくのを感じる。そして、思う。シンディ・ローパーか、楽曲を買ってみようかな…と。
「これは僕が想像する理想的なマッチングですが、現実でもこんなことが起こればいいなと思っています。世代を超えて、新しい音楽との出会いが生まれることがこのサービスの醍醐味の一つ」と、オンガクスリを考案した面白法人カヤック企画部の高橋祐司氏(24歳)は話す。
オンガクスリは誰でも手軽に利用できる。まずフェイスブックかツイッターのアカウントで登録しログイン。50文字以内で悩みを投稿したら、後は他のユーザーからの音楽の紹介を待つだけだ。
あるいは他人の悩みに対して紹介された音楽を聴いてみるのも有効だ。20曲、30曲と多くの音楽が紹介されている悩みもあり、それはいわば不特定多数のユーザーが共同で作り上げた“偶然”のプレイリスト。自分の悩みに近いプレイリストを聴けば、一定の効果が望め、新しい音楽とも出会える。
また、他人の悩みに対して音楽を紹介する「回答者」になることも楽しみ方の1つだ。「世の中には自分が知っているいい音楽を人に教えたいという欲求を持つ人が少なくない。そのニーズを満たすこともサービスの狙い」と、プロジェクトメンバーであるカヤック技術部の井谷裕紀氏(24歳)は指摘する。つまり、「悩みを投稿する」「他人の悩みのプレイリストを聴く」「投稿に対し楽曲を紹介する」という3通りが主な使い方となる。