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アマデウスたち

中村拓志
人と建物が響き合う喜びのために

週刊ダイヤモンド編集部
【第40回】 2008年8月1日
著者・コラム紹介バックナンバー
中村拓志
写真 加藤昌人

 機能性を突き詰め、合理的、普遍的な構造物を目指したモダニズム。その反動として、形而上学的な意味づけを与えようと試みたポストモダン。古い様式美を捨て去り、思想性を追い求め、いわば神による創作に近づこうとした近代建築は、結果としてそこに集う人を置き去りにしているのではないか――。

 威圧感すら与えるほどに、形を主張する巨大建造物を目にするたびに、そんな違和感を抱いてきた。「建築とは本来、社会や環境に寄り添い、人の感情や感性と響き合うものではないのか」と。

 初めて手がけた個人住宅は、日の当たらない建物の北面にあえて窓を設けず、妊婦のお腹のように壁をぽっこりと外側にふくらませた。内側では、天窓から柔らかな光が降り注ぎ、緩やかなカーブを描く壁のくぼみに日だまりをつくる。そこには少女が寝そべり、まるで母の胎内にでもいるかのようにまどろんでいた。その光景を目にしたとき、初めて人と建物が一体になる喜びを感じた。

 東京・銀座の世界的なラグジュアリーブランドの旗艦店に続き、2009年に竣工するクウェートの複合商業施設を手がける。建築が強力なブランディングツールになりうることを知り尽くした海外企業が、こぞって指名する。次のテーマは、「ブランディングやCSR(企業の社会的責任)に、建築がどうかかわっていけるか」。野心的である。

(ジャーナリスト 田原 寛)

中村拓志(Hiroshi Nakamura)●建築家。1974年生まれ。NAP建築設計事務所代表。明治大学大学院理工学研究科博士前期課程修了後、隈研吾建築都市設計事務所を経て、28歳で独立。SDA大賞(経済産業大臣賞、2003年)、JCDデザインアワード大賞(2006年)など受賞多数。著書に『恋する建築』(アスキー)。

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