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莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

美味しい葱油餅の話題が
無味乾燥な防空識別圏の話に圧勝

莫 邦富 [作家・ジャーナリスト]
【第186回】 2013年12月19日
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 中国が東海防空識別圏を設けた問題で、日本の政治家たちもメディアも連日、その議論で賑わっていた。しかし、その時の私の関心はむしろ、防空識別圏とはまったく関係も関連性もないところにあった。中国のネットに出ていたある写真に関心を引き寄せられたからだ。

目を奪われた屋台の文字

 写真の舞台は中国のどこの都市なのかは分からないが、緑が豊かできちんと整理整頓された静かな町である。その一角に、朝食を販売するリヤカーが停まっている。リヤカーの赤い棚と周りにある緑の並木とのコントラスはなかなかいいものだ。柔らかい太陽の光も見る人の心を和ませてくれる。

 中国の都市部のどこでも見られるような景色に、なぜ私はそこまで気を取られたのか。実は、この朝食の屋台に書かれている文字に目を奪われたのだ。そこに書いてあるのはなんと「寿司」という2つの漢字であった。日本の寿司屋なら、暖簾の下に魚偏の文字をいっぱい並べて寿司屋であることを強調する習慣があるが、ここでは図の3文字だけが書かれている。

 ご存じのように、漢字の作り方から見ると、木が一本だけの場合は木と言う。その木がたくさん集まって群生している様子は「林」と表現する。その木が広域にわたって密集している様子を「森」という漢字で言い表す。牛も羊も魚も3つ重ねて表現しているのは、その食材の豊富さを強調しようとする意図ではないか、と思う。

 拙著『鯛と羊』をお読みになった方なら、きっとご存じだと思うが、私はその中で、中国語には牧畜文化の色彩が色濃く残り、日本語は海洋文化のはっきりした特徴をもっている、と主張している。寿司を販売するところに、図の文字で分かるように「魚」と並んで「牛」、「羊」が書かれているのがなかなか中国的だと思う。こういうところに、私は文化の違いなどを見出して、興味を覚えている。

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莫邦富(モー・バンフ) [作家・ジャーナリスト]

1953年、上海市生まれ。85年に来日。『蛇頭』、『「中国全省を読む」事典』、翻訳書『ノーと言える中国』がベストセラーに。そのほかにも『日中はなぜわかり合えないのか』、『これは私が愛した日本なのか』、『新華僑』、『鯛と羊』など著書多数。


莫邦富の中国ビジネスおどろき新発見

地方都市の勃興、ものづくりの精度向上、環境や社会貢献への関心の高まり…中国は今大きく変わりつつある。先入観を引きずったままだと、日本企業はどんどん中国市場から脱落しかねない。色眼鏡を外し、中国ビジネスの変化に改めて目を凝らす必要がある。道案内人は日中を行き来する中国人作家・ジャーナリストの莫邦富氏。日本ではあまり報道されない「今は小さくとも大きな潮流となりうる」新発見を毎週お届けしよう。

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