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山田厚史の「世界かわら版」

北朝鮮の粛清は制裁外交の「成果」
だが、兵糧攻めは軍人支配を強化する

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第51回】 2013年12月19日
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 北朝鮮のナンバー2の張成沢氏が「国家への反逆」と断罪され、4日後に処刑された。

 この国の異常さを物語る出来事だが、われわれも間接的に手を貸している、と言えないだろうか。日本が国際社会と連携して行なっている経済制裁と無縁でないからだ。

 「北を窮乏化させ、政権を追い詰める」というのが経済制裁の狙いだ。仲間割れが起こることは想定内である。「まさかこんなことに」と驚く人は多いだろうが、「シナリオ通りの展開になってきた」というのが冷静な見方だろう。

孤立化の反動で
愛国心が鼓舞され軍人が力を持つ

 党派や派閥の争いはどの国にもあることだが、北朝鮮では「命がけの闘争」になっている。孤立し極度に追いつめられた集団に、命をやり取りする内部闘争が起きやすい。ソ連のスターリン体制や日本の浅間山荘事件もそうだった。

 児童虐待が、孤立してどん詰まりになった家庭で起こるのと似ている。国家も孤立し窮地に立つと、狂気が漂う。

 孤立は北朝鮮が選んだ道だが、追い込んだのは国際社会でもある。貿易を行わない、人の往来を断つ。経済制裁は「国家に対する兵糧攻め」で、相手を孤立させ、窮乏化させる外交政策である。

 「兵糧攻めを続ければ、やがて内部崩壊が始まり、北朝鮮は瓦解する」というのが戦略の筋書きで、今のところその通りのことが起きている。

 だが、「兵糧攻め」が「国家の瓦解」へと進む過程では、おぞましいことがたくさん起こる。血なまぐさい権力闘争はその一つだが、深刻なのは人々の暮らしが破壊され、飢えが広がることだ。「不足の経済」では物資がヤミで取引され、不正や特権が発生する。監視が厳しくなり秘密警察が力を持つ。孤立化の反動で愛国心が鼓舞され、軍人が力を持つようになる。北朝鮮の先軍政治はまさにそれだ。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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