台湾をめぐって米国と中国が武力衝突したら限定核戦争は避けられない!?【専門家が予測】写真はイメージです Photo:PIXTA

安全保障の専門家である筆者によれば、台湾有事においては、米国と中国が直接の戦闘に突入する可能性が高いという。両国とも台湾に対して容易に譲ることのできない重要な利益を見出しており、双方にとって「負けられない戦い」だ。核弾頭保有数において世界2位と3位の核戦力は、もはや飾りではなくなるかもしれない。※本稿は、村野 将『米中戦争を阻止せよ トランプの参謀たちの暗闘』(PHP研究所)の一部を抜粋・編集したものです。

中国、北朝鮮、ロシアが目論む
「核の影による勝利の方程式」

 ここでは、近年米国の戦略コミュニティが焦点を当ててきた深刻な課題である、限定核戦争のリスクを取り上げる。

 2014年に発生したロシアのクリミア侵攻以降、戦略コミュニティでは、ロシアだけでなく、中国や北朝鮮も、概ね共通した「セオリー・オブ・ビクトリー(勝利の方程式)」を構築しようとしているのではないかとの懸念が共有されてきた。

 この文脈で言う彼らのセオリー・オブ・ビクトリーとは、核をちらつかせた脅しを行ないながら、米国が介入する意思を固める前に何らかの既成事実化を達成してしまおうという戦略のことである。

 そのため、これらの国々の現状変更行動を抑止するには、当初はそれが法執行機関同士の睨み合い(=グレーゾーン)や通常戦力同士の限定的な衝突といった比較的烈度(編集部注/軍事的衝突や緊張の程度)の低いものであったとしても、相手がいずれかの段階で「核兵器を使用してくるのではないか」という懸念を念頭に置きながら対処せざるを得ない。