韓国の尹錫悦大統領が1月19日、独立捜査機関「高位公職者犯罪捜査処」によって逮捕されました。現職の国家元首が逮捕されるとは前代未聞のことで、韓国情勢は大混乱に陥っています。佐藤氏は、そんな韓国情勢とフジテレビ炎上会見が酷似すると指摘します。その理由とは?(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
軍を統制できなかった尹大統領
韓国の尹錫悦大統領が1月19日、独立捜査機関「高位公職者犯罪捜査処」によって逮捕されました。現職の国家元首が、自ら内乱を主導した容疑で逮捕されるとは、前代未聞です。
尹大統領は、内乱罪に関する取り調べに応じていないと報じられています。これは、尹大統領が検察出身だからでしょう。被疑者の供述の一部だけつまんで都合のいい調書を作ってきた自分の経験から、少しでも喋ったら有罪にされることを悟り、必要なことは全部公判で話すという判断をしているのだと思われます。
尹大統領が正統性を失った原因は、暴力装置を備える配下の組織を統制できなかった点にあります。どう見ても、国内に重大かつ明白な形での騒擾状態が生じているわけではない。たかだか国会で法案が通らないという政局の問題なのに、なぜ非常戒厳を宣言せざるを得ないのか。軍に向けた説明と準備が、完全に不足していました。
マックス・ウェーバーが言ったように、「国家は合法的な暴力装置を独占する機関」です。大統領が最高指導者であるのに、軍が非常戒厳の命令に従う構造になっていない現状が露呈してしまいました。