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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

ルールは何のために必要なのか? 浅田真央vsキム・ヨナで感じた、「ルールづくり」の本当の意味

――新しい時代に即応した環境規制とは?

見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]
【第12回】 2010年3月9日
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 日本選手の活躍で連日盛り上がったバンクーバー冬季オリンピックが終わりました。特に、女子フィギュアスケートの浅田真央選手と韓国のキム・ヨナ選手との対決は、見応えのある素晴らしいものでした。シアトル・マリナーズのイチロー選手は、この2人の対決に「人が採点する競技だから(コメントは)難しいですが、どちらもすごい。直接(会場で)見られた人は幸せですね」と語ったそうです。

 それぞれが素晴らしい個性を持つ演技に対して、敢えて順位をつけなければならない場合、採点ルールを設けなければならないのは、非情ですが、スポーツの世界では仕方がないことです。逆にいえば、結果がルールに左右される以上、「基準(ルール)をつくることの重要性」を、あらためて感じました。

 ルールづくりといえば、政府は「地球温暖化対策基本法案」の策定を急いでいます。新しい時代に即応した環境規制は、確かにとても重要なことだと思います。しかし、企業にとっては、新たな負担となる「国内排出量取引制度」や「地球温暖化対策税(環境税)」などが盛り込まれる見通しであることから、経団連も詳細についてまだ明らかになっていない段階から意見書を出すなど、政府の動きを牽制しています。

 一方で政府の企業に対する期待値は、この問題に対する技術的イノベーションや雇用創出などの点で、かなり高いようです。事実、政府の新成長戦略でも、市場規模や雇用規模の点で日本の強みを活かした成長分野として、環境・エネルギー分野に期待を寄せています。

 しかしながらこの問題について、政府と企業との関係は新政権になってから特にギクシャクしており、十分な議論がなされていないとの印象を強く受けます。もちろん、環境問題における政府と企業との見解の相違は、今にはじまったことではでありませんが、議論の過程が見えないことは、これまでになかったことです。

企業のイノベーションを誘発する
環境規制とは?

 環境規制と企業の競争力については、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・E・ポーター教授の「よい環境規制は企業競争力を強くする」という、いわゆる“ポーター仮説”が有名です。その中でポーター教授は、適正に設計された環境規制は、企業のイノベーションを誘発するとして、その6つのメリットを挙げています。

1)環境規制は、非効率な資源利用や潜在的な技術向上に企業の目を向けさせる。
2)環境規制により、企業に報告が義務付けられることで、企業は情報収集に努め、そのことが企業の意識を高めることになる。
3)環境対策への投資の不確実性が、環境規制により減少する。
4)環境規制は、イノベーションや進歩を促す圧力となる(外圧となる)。
5)環境規制は、過渡的なビジネスの分野で公平な条件を維持する役割を果たす。
6)環境規制は、イノベーションと環境コストの相殺が不十分な場合に機能する。

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見山謙一郎 [立教大学AIIC特任准教授/フィールド・デザイン・ネットワークス代表]

1967年生まれ、埼玉県出身。90年立教大学法学部を卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。05年立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修了(MBA)。同年10月に三井住友銀行を退職し、Mr.Childrenの桜井和寿等が設立したNPOバンク(ap bank)に理事として参画。09年2月に株式会社フィールド・デザイン・ネットワークスを設立し、代表取締役に就任。企業や金融機関に対する戦略・企画コンサルティングを行う。専門は、循環型(環境)ビジネス、ソーシャルビジネス、BOPビジネス及びファイナンス。立教大学AIIC「立教グラミン・クリエイティブラボ」副所長。多摩大学経営情報学部非常勤講師。
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元銀行マンの准教授が語る 「腹に落ちる」環境学

ちまたにあふれる環境ニュースやキーワードの数々。近年のエコブームで「地球にやさしい」というところで思考停止してしまい、その本質を理解できていない人は意外と多い。当連載では、国やメディアに先導されたままの環境キーワードを取り上げ、「論理」と「感性」の両方を満たす、真の環境リテラシーについて考える。

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