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組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」

「倍返し社員」は本当に組織で生き残れるのか?
ゲーム理論と神経科学に見る半沢直樹の絶妙な処世術

――処方箋㉞ 復讐心に囚われない「しっぺ返し」こそがヒーローへの道

渡部 幹 [モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]
【第34回】 2014年1月8日
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「やられたらやり返す、倍返しだ!」
半沢直樹の生き方は本当に合理的か?

 マレーシアの国教はイスラム教だが、他の宗教にも寛容で、クリスマスは休日となり、その前後に多くの人は休暇をとるため、欧米と同様のビッグホリディ・シーズンとなる。

 筆者もその間に、しばしの休暇をとることができた。ちょうど日本を出るタイミングだったために見逃していたドラマ『半沢直樹』(TBS系)のDVDを購入し、遅ればせながら全話観ることができた。あまりに面白かったので、原作本2冊だけでなく、続編の『ロスジェネの逆襲』まで読んでしまった。

 このドラマ、および原作の面白さは、それこそ何百というブログやサイトで紹介されていて、筆者もそれらに賛同する。自己保身のために悪巧みをし、半沢を陥れようとする勢力に対し、知恵と努力と仲間の協力で「倍返し」をする痛快さが、このドラマの真骨頂だろう。

 ただ、一視聴者ではなく心理学者としてこのドラマを観ると、また別の面白さを見出せる。

 それは半沢の行動規範「やられたらやり返す、倍返しだ!」が、本当に生き残るための術となり得るのかどうかという問題だ。

 面白いことに、原作者の池井戸潤氏自身が『週刊ダイヤモンド』のインタビューにて「実社会で半沢のように振る舞ったら首になる」ということを述べているし、ドラマの出演者や製作者のインタビューにも、同様のコメントが見られる。

 確かに、ドラマのように外連味たっぷりに相手を挑発し、最後に見事にやっつけるというようなことをやれば、半沢の主張以前にそのやり方への反発が大きくなり、組織の中で出世することは難しくなるだろう。

 しかし、それを差し引いて考えれば、半沢の行動規範そのものは、実はそれほど不利ではない。むしろ有利になることさえあるというのが、筆者の見解だ。その理由を述べてみたい。

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渡部 幹(わたべ・もとき)
[モナッシュ大学マレーシア校 スクールオブビジネス ニューロビジネス分野 准教授]

UCLA社会学研究科Ph.Dコース修了。北海道大学助手、京都大学助教、早稲田大学准教授を経て、現職。実験ゲームや進化シミュレーションを用いて制度・文化の生成と変容を社会心理学・大脳生理学分野の視点から研究しており、それらの研究を活かして企業組織にも様々な問題提起を行なう。現在はニューロビジネスという大脳生理学と経営学の融合プロジェクトのディレクターを務めている。代表的な著書に『不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか』(共著、講談社刊)。その他『ソフトローの基礎理論』(有斐閣刊)、『入門・政経経済学方法論』、『フリーライダー あなたの隣のただのり社員』 (共著、講談社)など多数。


組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」

職場で「不快感」を訴える社員が急増している。成果主義的な評価制度を導入する企業が増えたことにより、チームワークよりも自分の業績を重視する社員が増え、「ギスギス職場」が生まれているからだ。一方で、年功序列と終身雇用が崩壊しつつある職場では、職場の「世代間ギャップ」もかつてなく広がっている。こうした職場は結束やコミュニケーションを失い、社員の不快感は増していく。職場の不快感を取り除くには、制度的な「仕組み」を導入するだけでは不十分だ。部下1人1の「心」に効く、メンタル・マネジメントの方法論を上司が体系的に理解しておく必要がある。この連載では、日本の職場で起こりがちな「不快感」の臨床例を毎回わかりやすく紹介し、それを解決するメンタル・マネジメントの方法論を、社会心理学的な視点を織り交ぜながら、詳しく解説していく。

「組織の不調は社員を枯らす!職場の不快感に効く「メンタル・マネジメント」」

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