2013年は日本が大きな転換に踏み切った年だった。経済面では何と言っても「アベノミクス」に尽きる。黒田日銀が「異次元金融緩和」に踏み切り、10兆円を超える補正予算も手伝って、日本経済は回復基調に入った。さらに、2020年の東京オリンピック開催も決定、楽天の田中将大投手が24連勝という前人未踏の大記録を打ち立て、同球団は初の日本一にも輝いた。総じて日本経済には明るい雰囲気が戻りつつある。一方、安倍首相は年の瀬になって靖国神社に参拝し、日中、日韓との関係改善はさらに遠のいたようにみえる。
さて、新年はまず4月に消費税増税が実施される。景気への影響が懸念されるものの、財政再建には道筋がついたとは言い難い。さらに緊張高まる東アジア情勢に、安倍政権はどう対処するのか。2014年は午年。軽やかに駆け抜けることができるのか、暴れ馬のごとき年になるのか。経営者、識者の方々にアンケートをお願いし、新年を予想する上で、キーとなる5つのポイントを挙げてもらった。
軍事ジャーナリスト。1941年、京都市生まれ。64年早稲田大学政経学部卒、朝日新聞社入社。68年から防衛庁担当、米ジョージタウン大戦略国際問題研究所主任研究員、同大学講師、編集委員(防衛担当)、ストックホルム国際平和問題研究所客員研究員、AERA副編集長、編集委員、筑波大学客員教授などを歴任。動画サイト「デモクラTV」レギュラーコメンテーター。『Superpowers at Sea』(オクスフォード大・出版局)、『日本を囲む軍事力の構図』(中経出版)、『北朝鮮・中国はどれだけ恐いか』など著書多数。
①米中関係の親密化が進み、安倍首相は厄介者になるか?
「財政再建・輸出倍増」を国家目標とする米国は、中国からの融資・投資の確保と急拡大する中国市場への一層の進出をめざし、中国に対する「コンティンメント」(封じ込め)は考えず、「エンゲージメント」(抱き込み)をはかる、と明言している。中国はそれに応じ、米国と「不衝突、不対抗の大国関係」を目指す、とする。経済だけでなく軍事面でも今年「リムパック」(米海軍が主催する環太平洋合同演習)に中国海軍が参加し、アナポリスの米海軍兵学校に中国海軍士官候補生が入校、制服上級幹部の交流も拡大するなど親密の度が加わる。
だが、日本では米中が対立関係にあるような思い込みから脱却できず「日米韓豪の連携強化で中国に対抗」とか「中国包囲網」など、現実離れした論が強い。これは米国の親中政策に障害となるから、米国は安倍首相の靖国神社参拝を非難する声明を出したり、バイデン副大統領の訪日の際、防空識別圏撤回を求める日米共同声明を出すことを拒否するなど、安倍首相に組みしない姿勢を中国向けに示している。米国は基本的に親中、日本は反中である以上、今年もこうした現象が次々に起きるだろう。