ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

大川小検証委「最終報告書案」に落胆する遺族
委員長の「ささやかな達成感がある」発言に唖然

池上正樹 [ジャーナリスト]
【第34回】 2014年1月22日
1
nextpage
3回目となった検証委員と遺族の意見交換会

結局、目新しい情報は、何ひとつ出てこなかった。学校管理下にあった児童・教職員84人が東日本大震災の津波で犠牲になった宮城県石巻市立大川小学校。第9回事故検証委員会は1月19日の12時30分から、石巻市の石巻合同庁舎で行われ、ついに最終報告書案が示された。しかし、たくさんの矛盾や疑問が解明されないままの曖昧な内容に、遺族からは批判や不満が噴出。心が折れて泣く人や、途中退出した人もいた。意見交換や記者会見を含めた最終報告書案を巡る議論は、7時間半に及んだ。

5700万円の血税を使ってこれ?
核心に結局触れなかった最終報告案

 1年かけて事実を積み上げることのできなかった検証に、いったい何の意味があったのか。

 この日、配布された「大川小学校事故検証報告書(案)」は、160ページに及ぶ。しかし、なぜ地震発生から津波が襲うまでの約50分間、子どもたちは校庭から1メートルも上がることなく、助かるはずの命が失われたのか。遺族が知りたがっていた、その核心部分に迫る事実は曖昧なままだった。

会合が始まる前に、最終報告の資料を読み込む遺族の佐藤美広、とも子夫妻。当時3年生だったひとり息子は、野球が大好きだった

 この間、遺族が報告会や意見交換の場で検証委員会側に指摘してきた数多くの矛盾や情報提供、訴えなどは、ことごとく無視された。

 それでも、新たに、20ページにわたって24項目の「提言(案)」が出てくるなど、失望や落胆に打ちひしがれる遺族たちを前にして、「ささやかな達成感がある」と“自画自賛”に浸る検証委員会の運営ぶりには、思わずゾッとした。

 意見交換に入ると、この日、最終報告書案に初めて目を通したばかりの遺族が、こう問いかけた。

 「これは大川小学校の事故を基にした提言ですか?この1年、何か目新しい事実は出てきましたか?市教委、遺族が調べた情報以上のことは何ひとつ出て来てませんよ」

 「校長の資質とか、助かった先生のこととか、核心部分が見えてこない。これが57万円でできた検証ならいい。最大の被災地の血税を5700万円も使った価値がありますか?」

 しかし、室崎益輝委員長(神戸大学名誉教授)は「私は価値がある報告書を作ったと思っている」「新しいことはたくさんわかった」と答えた。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

池上正樹 [ジャーナリスト]

通信社などの勤務を経て、フリーのジャーナリストに。主に「心」や「街」を追いかける。1997年から日本の「ひきこもり」界隈を取材。東日本大震災直後、被災地に入り、ひきこもる人たちがどう行動したのかを調査。著書は『ひきこもる女性たち』(ベスト新書)、『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『下流中年』(SB新書/共著)、『ダメダメな人生を変えたいM君と生活保護』(ポプラ新書)、『あのとき、大川小学校で何が起きたのか』(青志社)など多数。TVやラジオにも多数出演。厚労省の全国KHJ家族会事業委員、東京都町田市「ひきこもり」ネットワーク専門部会委員なども務める。YAHOO!ニュース個人オーサー『僕の細道』

 


大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~

東日本大震災の大津波で全校児童108人のうち74人が死亡・行方不明となった宮城県石巻市立大川小学校。この世界でも例を見ない「惨事」について、震災から1年経った今、これまで伏せられてきた“真実”がついに解き明かされようとしている。この連載では、大川小学校の“真実”を明らかにするとともに、子どもの命を守るためにあるべき安心・安全な学校の管理体制を考える。

「大津波の惨事「大川小学校」~揺らぐ“真実”~」

⇒バックナンバー一覧