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出口治明の提言:日本の優先順位

東京都知事選挙の争点は何か、もしくは何であるべきか

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第106回】 2014年1月22日
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 猪瀬前都知事の辞任に伴う東京都知事選挙は、1月23日に告示され、2月9日に投票される運びとなった。候補者もほぼ出揃った感がある。政権与党の自民・公明は、舛添元厚労相を、民主は細川元首相を推す構えだ。ところで、今回の東京都知事選挙に当たって、私たち有権者は何を考えるべきなのだろうか。

70%台の投票率を目指そう

 今さら言うまでもないことだが、民主主義の基本中の基本は、まず投票所に足を運ぶことである。北欧を始めとする民主主義の先進国では80%台、90%台の投票率も決して珍しくはない。それは、選挙の持つ意味が、徹底して教育されているからではないか。

 昔、北欧の友人に聞いた話であるが、「どのような選挙であれ、事前にマスメディアの予想が公にされる。予想通りで良ければ選挙に行ってその通り投票するか白票を投じるかもしくは棄権すればいい。事前予想に賛成でなければ、選挙に行って、違う候補者(もしくは政党)の名前を書かない限り、有権者は意思表示をすることができない」というごく当たり前の事が、学校や地域・家庭で繰り返し徹底して教育されるそうだ。どこかの国のような「白票や棄権も立派な意思表示である(自己満足としてはそうかもしれないが、結果的には予想当選者もしくは予想第1党に投票したのと何ら変わるところがない)」とか「無党派層は寝ていてくれればいい」とかいった発言は、およそ考え得べくもない。

 ところで、戦後18回の東京都知事選の投票率をみると、70%台が2回、60%台が6回、50%台が7回、40%台が3回となっている。最高は、当時の美濃部都知事が「ストップ・ザ・サトウ」のスローガンを掲げて、秦野元警視総監と争った1971年選挙の72.36%であり、最低は、鈴木都知事と社会党の和田前参院議員が争った1987年選挙の43.19%である。一般に立候補者の顔触れが多彩で、争点が明確である場合は、劇場効果が働き投票率が上がる傾向にある、と言われているが、よくよく考えてみれば、これほど有権者を愚弄した話はないのではないか。

 確かチャーチルの言葉だったと記憶するが、「政治を志す人は立派な人ばかりではなく、とんでもない人も大勢いる。選挙とはそういった有象無象の候補者の中から、相対的に現時点で税金を分けるのにマシな人を選び続ける『忍耐』そのもの」なのだ。チャーチルのように一切の幻想を排した「リアリズム」を私たち有権者がきちんと認識し、腹落ちしていれば、候補者の出来不出来にかかわらず、北欧諸国のように投票率を上げることはそれほど難しくはないはずだ。今回の知事選挙で、私たちが真っ先に考えるべきことは、まず投票率を上げることである、と考える所以である。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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