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岸博幸のクリエイティブ国富論

“都合のいい女”ルネサスのリストラから学ぶべき教訓

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第253回】 2014年1月24日
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 マイコン世界最大手のルネサスエレクトロニクスが大規模なリストラを発表しました。経産省の歪んだ判断の下で官民ファンドの産業革新機構が大規模な出資を行なったルネサスが大規模なリストラを行なうという事実を見ると、改めて政府の政策や雇用制度の歪みを感じざるを得ません。

税金で企業だけ救って
人を救わないという現実

 時間が経つと意外とすぐに忘れてしまいますが、2012年秋にルネサスが米国のファンドに買われそうになって、政府出資が大半の官民ファンドの産業革新機構が約1400億円もの大規模な出資を行ないました。有り体に言えば、公的資金で救済したのです。

 “最先端の技術を持つ企業の再生は日本経済のために必要”といったもっともらしい理屈が付けられていましたが、当時このコーナーでも書いたように、その実態は、日本の自動車メーカーや家電メーカーのためにカスタマイズされたマイコンを格安の安価で作る“都合のいい女”状態を少しでも長く続けさせるために、公的資金で救済したに過ぎません。

 だからこそ、円安で環境は良くなっているはずなのに不採算製品の合理化は進まず、国内従業員の1/4を削減するという追加リストラを行なう羽目に陥ったのです。経産省の間違った判断の下で公的資金が無駄に使われた典型例となりつつあるのは嘆かわしい限りですが、それと同時に考えるべきは、税金で救済された企業で社員のクビ切りが行なわれる、つまり企業は救っても人は救わないという産業政策をどう捉えるかです。

 これはやむを得ない側面もあります。仮にルネサスへの公的資金投入が、システムLSIという将来有望な部分だけを切り出してそこに行なわれていたなら、それは正当化できましたが、その場合でもグローバル競争に勝ち残るためにはやはりある程度のリストラは必要だったはずです。

 それでシステムLSI部門が世界市場を制覇できれば、将来的には日本の経済や雇用に貢献できるので、短期的に人を犠牲にしても税金で企業を救った価値はあったとなります。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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