1月30日、財務省は2013年の輸出確報・輸入速報を公表した。それによると、輸出は69兆7868億円、輸入が81兆2671億円で、差し引き11兆4803億円の大幅な貿易赤字となった。

 わが国では貿易赤字について、「原子力発電所が停まっているのだから、鉱物性燃料の輸入が増えて赤字になるのは仕方がない」といった一種の楽観論(?)が幅を利かしているように見受けられる。しかし、本当にそうなのだろうか。貿易赤字の内容をチェックしてみよう。

全原発停止による
押し上げ効果は4兆円程度

 まず、過去10年間の貿易収支の推移をながめてみよう。

 輸出のピークは2007年の83兆9314億円、これに対して輸入のピークは昨年で差し引きの赤字幅も昨年の11兆4803億円が過去最大となった。3年連続の釣瓶落としの状況である。このうち、全原発停止による鉱物性燃料の輸入価額の押し上げ効果は、どのくらいあるのだろうか。

 新聞報道(2013.12.18日経Web刊)によると、実は「年間で4兆円程度」(SMBC日興証券の宮前シニアエコノミスト)ということのようだから、仮に原発が再稼働しても、わが国の貿易赤字は11兆円の赤字が7兆円の赤字に減るだけで、史上最高の赤字であることに変わりはない。

 むしろ、昨年1年では、為替が21.8%も円安に振れているので、原発停止よりも円安効果の方が貿易赤字に与える影響ははるかに大きいことがよく分かる。2012年の輸入価額70兆6886億円を全てドル建てとみなして単純計算すると、21.8%円安になれば、それだけで15兆円ほど赤字が膨れ上がることになる(実際には約11兆円の赤字の増加)。

 これに対して、輸出は大幅な円安にも係らず金額ベースで9.5%しか増えておらず、また数量指数では▲1.5%と3年連続の減少となっている。昔のように円安はそれほどの輸出増には繋がらなくなっているのだ。それはなぜだろうか。