あなたの机に入社志願者の学生から履歴書が届く。それも手書きが一通と、パソコンで作成し印刷したものが一通。あなたはどちらに好感を持つだろうか?

 ライフネット生命が2012年10~11月に新卒採用関係者を対象に実施した意識調査で、ちょっと意外な結果が出ている。1000件の有効回答の内訳は、どちらも差がないという回答が68.3%と大勢を占めはしたものの、手書きが有利かやや有利と答えた人が合わせて28.7%と、パソコン有利派の合計3.0%を大きく上回ったのだ。

 手書き書類など、オフィスからほぼ消えたこの時代に、どうして手書きが好ましいという声が出てくるのか?

「履歴書だけは手書き」が好まれる理由

 就職氷河期とよく言われるが、企業が新卒採用をしぼり、正社員の門戸が狭くなるなか、学生たちは激しい競争を強いられている。

「就職四季報2014」によれば、エントリーシート(ES)を含めた応募者数の首位はディー・エヌ・エーで総計3万2857人にもなり、これを筆頭に上位15社で応募者が1万人を超えている。

 ESとは、おおむね応募の最初の段階で提出が求められる書類で、履歴書に似ているが、「志望動機」「学生時代に打ち込んだこと」といった項目を長文で書かせることで、適性や人柄をつかもうというもの。面接の資料として使われることもあるが、多すぎる志願者をふるいにかけて、会いたい学生を選び出すために使われることの方が多い。

 応募者をふるいにかける手段としては、他にWebテストというものもある。こちらも併用して、テストの点数で一部を足切りできるにしても、1万通にもなるESを人力でチェックするのは途方もない手間だ。

 そこに手書きのESが届いたらどうだろう? 手書きなら、文字の丁寧さや修正ペンを使っていないか、そして文字の配置や強調のしかたなどから、ぱっと見でもある程度までは応募者の本気さや人柄が伝わってくる。それをありがたいと感じる企業担当者もいるかもしれないし、「本気さ」をアピールするためにわざわざ手書きする学生もいる。

 もっとも、ESをWebで提出させる企業もすでにかなりの割合に達している。大手就活サイト「リクナビ」が2015年度から「OpenES(オープン・エントリーシート)」というWeb提出用の共通フォーマットを打ち出したことで、ESのWeb化は今後ますます進むと思われる。