先生は、平成17年度のアサヒとキリンの貸借対照表を見せました。
その表を見ながら、三人はいろいろの発見、考察を話し合いました。
その内容をまとめてみると、次のようになります。

〈キリンは7,579億円にのぼる過去の蓄積をそっくり外部投資にまわしている〉

・資本金1,020億円に対して、7,579億円の余剰金をかかえている(自己資本比率 57%)
・その資金を負債(6,526億円)の返済に使わず、投資(7,413億円)にまわしているが、なお1,476億円の手許現金の余剰を持っている
・流動負債3,786億円に対し、流動資産は4,002億円あり、資金繰りに不安はない
・固定資産への投資は3,710億円で、アサヒに比べて少ない

〈アサヒはいまだに借金体質から抜け切れていないが、せっせと負債の返却をすすめている〉

・資本金1,825億円、余剰金2,512億円、自己資本比率44.2%
日本の製造業の平均と比べて自己資本比率は悪くないが、資本金(1840年)がキリンより多いのは再建時の増資による資金調達のため
・流動負債が3,855億円あるのに対して流動資産は2,840億円しかなく、かつ現金は30億円しかない。
手許資金がないため、資金繰りはきわめて厳しいが、なおかつ負債を返却する努力を続けている
・固定資産は4,989億円に及び、キリンの3,710億円より大幅に多いが、これは再建増産のための設備投資の償却が進んでいないためである
・外部への投資はキリンに比べて大幅に少ない(1,983億円 vs 7,413億円)